噛みしめる鎮魂と決意~BAROQUE「FLOWER OF ROMANCE」/「AN ETERNITY」(2018)
はじめに
数日ブログをやってて思ったことがいくつかある。
- 每日違うジャンルを書くのはしんどい
- あんまり決めごとはしないほうがいい
- 意外とどんな記事が読まれるか予測できない
上記の3点である。思えば以前レビューを書いていたサイトでは、自分と他の人間の差別化を図るために色々な制約を自分に課していたところがある。
なるべく新譜を書く、同じような音楽は連続して書かない、好きなアーティストが被ったら他の人に譲る…
今振り返ると悪い試みではなかったが、最後の方は書きたいものと書くべきものの間で苦心していた記憶がある。
そんなことを僕はすっかり忘れていたのか、自分のブログでも性懲りもなく同じ轍を踏むところだった。よろしくない。
というわけで上2点については完全にやめよーって思いました。
気持ちの赴くままにやんないと続かないんじゃないかな、という一種の逃げでしか無いけど。
最後のは気をつけるも何も僕の意志じゃないのでどうしようもない。とりあえず每日何か書くことだけ頑張ろうかなって思いました。
あ、BAROQUE?数日前も書いたけどめっちゃ書きたいから今回も書きます。
そう、この文章は全てこの記事への伏線だったのだ!!!
(実はシングル2枚連続紹介なんてしたこと無いからどう書けばいいかわからないなんて言えない)
BAROQUE「FLOWER OF ROMANCE」(2018)
- FLOWER OF ROMANCE
- FLOWER OF ROMANCE(Instrumental Ver.)
※別ディスクでミュージッククリップつき、撮影は元SADSのYUTARO
FLOWER OF ROMANCE 作詞:怜 作曲:圭
前作「GIRL」からほぼ2年ぶりに2枚同時リリースされたシングルのうちの1つ。
今作はシューゲイザー的な風味が漂うロックな作風で、アルバムであったようなオートチューンや前作のシングルで見せたある種の可愛らしさを完全に排除した感じでまず驚かされた。
シューゲイザー的で疾走感のある曲は再結成前の彼らも幾度となく披露してきた。しかし、このキャリアで、更には2人になってから今一度自分たちの若い頃の音楽性を彷彿とさせる物を出すとは思わかなったのだ。
昔と明らかに違うのはその風合い。自分たちのカッコよさはそのままに、きらびやかさではなく今までよりどこか無骨な印象を感じる。
しかし、その強さや攻撃性と共に包容力も感じさせるのは流行り年月がなせる技だろうか。
個人的には圭のギターサウンドの疾走感も過去最高潮だと思える。
ところどころ弾きまくるフレーズが入ってくるのはプロデューサーのken(L'Arc~en~Ciel)の影響だろう。こんなにギター弾きまくる人だとは思わなかったというのが正直なところである。曲中に弾きまくるところが何回も出てくるのが挑戦をしているように思う。
速弾きとか弾くんだなあ…って最初聴いた時は結構驚きました。
今作はベースにTHE NOVEMBERSの高松浩文、ドラムに彩冷えるのKENZOを起用したのだが、彼らの作り出すリズムもまた曲と呼応するようにひたすらに駆け抜けていく印象だ。
怜の歌詞が特に聴きどころだと思っている。
”この確かな胸の痛み
途切れかけていたメロディ
追いかけて 追い越しても
叫び続けている
壊れても 壊したらいいさ”
コレはサビなのだが、このように痛みと歩みを止めない意志に着目したものが多いように思う。色々あったBAROQUEがこれを言うと感慨深い。
LUNA SEAやL'Arc~en~Cielなど自分たちが好きな音楽の影響も垣間見えながら、実はところどころ「ila」のセルフオマージュに思える部分がある。
それがとてもおもしろいしカッコいい。
今の世代のヴィジュアル系ではなかなか聴くことの出来ない小細工抜きの疾走感を是非体験してほしい。
ちなみにPVもレコーディングと同じメンバーで撮影している。
怜がギターを構えていることや圭が弾きまくってるのがカッコいいのもあるのだが…
何よりも曲とリンクするようにカメラワークが回りまくるPV。
GLAYの誘惑、L'Arc~en~CielのHONEY、LUNA SEAのTONIGHTのようなヴィジュアル系伝統のアレが見られてとってもニッコリしました。
心から素直にカッコいいと思える曲。
BAROQUE - FLOWER OF ROMANCE (Full ver.)
BAROQUE「AN ETERNITY」(2018)
- AN ETERNITY
- AN ETERNITY(Instrumental Ver.)
※別ディスクでミュージッククリップつき、撮影は元SADSのYUTARO
AN ETERNITY 作詞:怜 作曲:圭
FLOWER OF ROMANCEと同時リリースされたバラードナンバー。
個人的2018年ベストバラード。
僕はこの曲を初めて聴いた時に驚かされた。BAROQUEってこんな凄いバンドだったか?
もちろん、彼らの音楽は昔からハイクオリティであり、後続への影響力も計り知れないものがある。
しかし、そういうことではないのだ。今までと明らかに違う曲調。そして、音楽を聴いてここまで鳥肌が立つような経験は何年ぶりだろうか。そう思った。
曲自体はギターの美しい伸びやかなフレーズを主軸にし、そこにピアノとストリングスを大胆に絡ませたバラードなのだが、圭のギターがところどころ鳴いている用に思える。ソレはボリューム奏法の効果もあるんだろうが、ソレ以上の何かを感じさせた。
どことなく、クラシカル、というかポストクラシカル的なものさえ感じさせる楽曲の精緻な美しさ。
個人的には圭が敬愛するアーティストが相次いで亡くなったことにも由来しているのだろうと思う。
1人はヨハン・ヨハンソン(1969年9月19日 - 2018年2月9日)。アイスランドの鍵盤楽器奏者でありマックス・リヒターとともにポストクラシカルの代表的なアーティストである。
作曲作品は幅広く、パンクロックやエレクトロニカ、勿論ポストクラシカルとさまざまである。また、映画音楽やコンテンポラリーダンスなど数多くのアートシーンとコラボしていた。
Jóhann Jóhannsson - Flight From The City
そして、もうひとりはロックバンドdownyのギタリスト青木裕(1970年1月29日 - 2018年3月19日)。
インプロヴィゼーション的なギターフレーズが特徴的で、そのギターはDIR EN GREの薫やDEAD ENDのMORRIE、LUNA SEAのSUGIZOのようなそういう界隈の面々から、about tessのTAKUTOなどジャンルを超えて多くのアーティストから評価されていた。
また、イラストレーターや音楽プロデューサーとしての顔も持つ多才な人である。
ちなみにインタビューでも圭が青木裕に捧げるつもりで曲を描いたことを認めている。
個人的に一番好きな曲。
青木裕 Aoki Yutaka "Lost in Forest" trailer (Part.1)
ほぼすべての音がギターで構成されている狂気のソロアルバム
青木裕 独奏 Aoki Yutaka Solo / 2018.03.04
この2人の存在は圭にとっても重要だったようで、Twitterでもその2人の存在の大きさに触れていた。
そんな悲しみの中から鎮魂歌として産まれたこの曲は、それこそポストクラシカルのように精緻な構成と音響的なギターの美しさに息を呑む。
怜の歌詞もまるで深い霧や森の中をさまよいながらも優しさを感じさせるものが多い。
歌詞からギターフレーズから、更には映像美含めてここまで完璧な曲はそうそう作られないし、それがヴィジュアル系という世界から出てきたことが僕は非常に嬉しく思う。
大サビからのギターは何回聴いても感動するし、怜の歌詞も悲しげでありつつも何処か優しげであり、それが胸を打つ。
ほんとうにあなくろフィルムとか作ってたバンドか?こんな素晴らしい曲作れるバンドだったか?
僕は聴くたびに何回も思っている。
個人的な聴きどころはやはり怜の最後の歌詞とその後の圭の1分半以上に及ぶインプロ的なギターソロ。
”I wonder what life is I wonder what tears are I wonder what I am
心を探して
I wonder what's sleeping I wonder what's sadness I wonder and wonder
心に降り積もる でも愛はあなたのそばに ”
マジでここからの展開が神がかっている。
ちなみにPVは完全に日が昇る前の北海道礼文島で撮られたのだが、その青みがかった映像の美しさが曲のもつ魅力を更に引き立てている。
ラスサビからギターソロに入る時にカメラが2人から遠ざかって岩肌と緑が印象的な礼文島の全景と海と空の絶景が映し出される瞬間とか何回見ても息を呑んでしまう。
BAROQUE - AN ETERNITY (Full ver.)
最後に
この2曲はブログを紹介する前、レビューサイトで書いてた頃から紹介したかったので形にできてよかったです。
本当にどちらも素晴らしい曲だし、BAROQUEの未来は明るいしまだまだ可能性に満ちたバンドだなと思いました。
これから聴く人も、すでに好きな人も、今のBAROQUEを知らない人も是非今の彼らに目を向けていただけると幸いです。
ここまで読んでいただきありがとうございました!