ミルクレープを崇めよ…

自分が個人的な思いの丈を延々と書き連ねていくサイトです。

噛みしめる鎮魂と決意~BAROQUE「FLOWER OF ROMANCE」/「AN ETERNITY」(2018)

はじめに

 数日ブログをやってて思ったことがいくつかある。

  • 每日違うジャンルを書くのはしんどい
  • あんまり決めごとはしないほうがいい
  • 意外とどんな記事が読まれるか予測できない

上記の3点である。思えば以前レビューを書いていたサイトでは、自分と他の人間の差別化を図るために色々な制約を自分に課していたところがある。

 

 なるべく新譜を書く、同じような音楽は連続して書かない、好きなアーティストが被ったら他の人に譲る…

 

 今振り返ると悪い試みではなかったが、最後の方は書きたいものと書くべきものの間で苦心していた記憶がある。

 

 そんなことを僕はすっかり忘れていたのか、自分のブログでも性懲りもなく同じ轍を踏むところだった。よろしくない。

 というわけで上2点については完全にやめよーって思いました。

 

気持ちの赴くままにやんないと続かないんじゃないかな、という一種の逃げでしか無いけど。

 最後のは気をつけるも何も僕の意志じゃないのでどうしようもない。とりあえず每日何か書くことだけ頑張ろうかなって思いました。

 

 あ、BAROQUE?数日前も書いたけどめっちゃ書きたいから今回も書きます。

そう、この文章は全てこの記事への伏線だったのだ!!!

(実はシングル2枚連続紹介なんてしたこと無いからどう書けばいいかわからないなんて言えない)

 

BAROQUE「FLOWER OF ROMANCE」(2018)

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花を全面に押し出した美しいアートワーク

 

FLOWER OF ROMANCE

FLOWER OF ROMANCE

 
  1. FLOWER OF ROMANCE 
  2. FLOWER OF ROMANCE(Instrumental Ver.)

※別ディスクでミュージッククリップつき、撮影は元SADSのYUTARO

 FLOWER OF ROMANCE   作詞:怜 作曲:圭

 前作「GIRL」からほぼ2年ぶりに2枚同時リリースされたシングルのうちの1つ。

 今作はシューゲイザー的な風味が漂うロックな作風で、アルバムであったようなオートチューンや前作のシングルで見せたある種の可愛らしさを完全に排除した感じでまず驚かされた。

 シューゲイザー的で疾走感のある曲は再結成前の彼らも幾度となく披露してきた。しかし、このキャリアで、更には2人になってから今一度自分たちの若い頃の音楽性を彷彿とさせる物を出すとは思わかなったのだ。

 昔と明らかに違うのはその風合い。自分たちのカッコよさはそのままに、きらびやかさではなく今までよりどこか無骨な印象を感じる。

 しかし、その強さや攻撃性と共に包容力も感じさせるのは流行り年月がなせる技だろうか。

 個人的には圭のギターサウンドの疾走感も過去最高潮だと思える。

ところどころ弾きまくるフレーズが入ってくるのはプロデューサーのken(L'Arc~en~Ciel)の影響だろう。こんなにギター弾きまくる人だとは思わなかったというのが正直なところである。曲中に弾きまくるところが何回も出てくるのが挑戦をしているように思う。

速弾きとか弾くんだなあ…って最初聴いた時は結構驚きました。

 

 今作はベースにTHE NOVEMBERSの高松浩文、ドラムに彩冷えるKENZOを起用したのだが、彼らの作り出すリズムもまた曲と呼応するようにひたすらに駆け抜けていく印象だ。

 怜の歌詞が特に聴きどころだと思っている。

 

”この確かな胸の痛み

途切れかけていたメロディ

追いかけて 追い越しても

叫び続けている

壊れても 壊したらいいさ”

 

コレはサビなのだが、このように痛みと歩みを止めない意志に着目したものが多いように思う。色々あったBAROQUEがこれを言うと感慨深い。

 

 LUNA SEAやL'Arc~en~Cielなど自分たちが好きな音楽の影響も垣間見えながら、実はところどころ「ila」のセルフオマージュに思える部分がある。

それがとてもおもしろいしカッコいい。

 

 今の世代のヴィジュアル系ではなかなか聴くことの出来ない小細工抜きの疾走感を是非体験してほしい。

ちなみにPVもレコーディングと同じメンバーで撮影している。

怜がギターを構えていることや圭が弾きまくってるのがカッコいいのもあるのだが…

何よりも曲とリンクするようにカメラワークが回りまくるPV。

 GLAYの誘惑、L'Arc~en~CielのHONEYLUNA SEAのTONIGHTのようなヴィジュアル系伝統のアレが見られてとってもニッコリしました。

心から素直にカッコいいと思える曲。


BAROQUE - FLOWER OF ROMANCE (Full ver.)

 

BAROQUE「AN ETERNITY」(2018)

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  1. AN ETERNITY
  2. AN ETERNITY(Instrumental Ver.)

※別ディスクでミュージッククリップつき、撮影は元SADSのYUTARO

 

AN ETERNITY 作詞:怜 作曲:圭


 FLOWER OF ROMANCEと同時リリースされたバラードナンバー。

 

個人的2018年ベストバラード

 

 僕はこの曲を初めて聴いた時に驚かされた。BAROQUEってこんな凄いバンドだったか?

もちろん、彼らの音楽は昔からハイクオリティであり、後続への影響力も計り知れないものがある。

 

 しかし、そういうことではないのだ。今までと明らかに違う曲調。そして、音楽を聴いてここまで鳥肌が立つような経験は何年ぶりだろうか。そう思った。

 

 曲自体はギターの美しい伸びやかなフレーズを主軸にし、そこにピアノとストリングスを大胆に絡ませたバラードなのだが、圭のギターがところどころ鳴いている用に思える。ソレはボリューム奏法の効果もあるんだろうが、ソレ以上の何かを感じさせた。

どことなく、クラシカル、というかポストクラシカル的なものさえ感じさせる楽曲の精緻な美しさ。

 個人的には圭が敬愛するアーティストが相次いで亡くなったことにも由来しているのだろうと思う。

 

 1人はヨハン・ヨハンソン(1969年9月19日 - 2018年2月9日)。アイスランド鍵盤楽器奏者でありマックス・リヒターとともにポストクラシカルの代表的なアーティストである。

作曲作品は幅広く、パンクロックやエレクトロニカ、勿論ポストクラシカルとさまざまである。また、映画音楽やコンテンポラリーダンスなど数多くのアートシーンとコラボしていた。


Jóhann Jóhannsson - Flight From The City

 

そして、もうひとりはロックバンドdownyのギタリスト青木裕(1970年1月29日 - 2018年3月19日)。

 インプロヴィゼーション的なギターフレーズが特徴的で、そのギターはDIR EN GREの薫DEAD ENDのMORRIELUNA SEASUGIZOのようなそういう界隈の面々から、about tessのTAKUTOなどジャンルを超えて多くのアーティストから評価されていた。

また、イラストレーターや音楽プロデューサーとしての顔も持つ多才な人である。

ちなみにインタビューでも圭が青木裕に捧げるつもりで曲を描いたことを認めている。

 

www.youtube.com

個人的に一番好きな曲。

 


青木裕 Aoki Yutaka "Lost in Forest" trailer (Part.1)

ほぼすべての音がギターで構成されている狂気のソロアルバム

 


青木裕 独奏 Aoki Yutaka Solo / 2018.03.04

青木裕生前最後のステージ。MORRIEのソロライブにて。

 

この2人の存在は圭にとっても重要だったようで、Twitterでもその2人の存在の大きさに触れていた。

 

 そんな悲しみの中から鎮魂歌として産まれたこの曲は、それこそポストクラシカルのように精緻な構成と音響的なギターの美しさに息を呑む。

 

 怜の歌詞もまるで深い霧や森の中をさまよいながらも優しさを感じさせるものが多い。

 

 歌詞からギターフレーズから、更には映像美含めてここまで完璧な曲はそうそう作られないし、それがヴィジュアル系という世界から出てきたことが僕は非常に嬉しく思う。

 大サビからのギターは何回聴いても感動するし、怜の歌詞も悲しげでありつつも何処か優しげであり、それが胸を打つ。

 

 ほんとうにあなくろフィルムとか作ってたバンドか?こんな素晴らしい曲作れるバンドだったか?

 

 僕は聴くたびに何回も思っている。

個人的な聴きどころはやはり怜の最後の歌詞とその後の圭の1分半以上に及ぶインプロ的なギターソロ。

 

”I wonder what life is   I wonder what tears are  I wonder what I am

心を探して

I wonder what's sleeping  I wonder what's sadness  I wonder and wonder

心に降り積もる でも愛はあなたのそばに ”

 

マジでここからの展開が神がかっている。

 

 ちなみにPVは完全に日が昇る前の北海道礼文島で撮られたのだが、その青みがかった映像の美しさが曲のもつ魅力を更に引き立てている。

 ラスサビからギターソロに入る時にカメラが2人から遠ざかって岩肌と緑が印象的な礼文島の全景と海と空の絶景が映し出される瞬間とか何回見ても息を呑んでしまう。

 


BAROQUE - AN ETERNITY (Full ver.)

 

最後に

 この2曲はブログを紹介する前、レビューサイトで書いてた頃から紹介したかったので形にできてよかったです。

 本当にどちらも素晴らしい曲だし、BAROQUEの未来は明るいしまだまだ可能性に満ちたバンドだなと思いました。

 これから聴く人も、すでに好きな人も、今のBAROQUEを知らない人も是非今の彼らに目を向けていただけると幸いです。

 ここまで読んでいただきありがとうございました!

扉の向こう側の光へ~Plastic Tree「インサイドアウト」(2018)

はじめに

 音楽のレビューを書くときは必ず同じようなアーティストは2日続けて書かないと決めている。理由は凄い単純で飽きっぽいからだ。新鮮感は大事だからね。

 SNSでアルバムについては散々話したしこんなものも書きました。

delivery-sushi-records.hatenablog.com

 このアルバムも本当に傑作だったのだが、次はどうするんだろう?とは感じていた。

 そんなアルバムの先の世界を今回は覗いてみようと思う。

 

Plastic Treeインサイドアウト」(2018)

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  1. インサイドアウト
  2. 灯火
  3. インサイドアウト(Instrumental)
  4. 灯火(Instrumental)

 

インサイドアウト (通常盤[CD])

インサイドアウト (通常盤[CD])

 

 

www.cdjournal.com

mikiki.tokyo.jp

1.インサイドアウト 作詞:有村竜太朗 作曲:長谷川正 編曲:Plastic Tree

 今作は2016年リリースの「サイレントノイズ」同様、PlayStation Vita用ゲーム『Collar×Malice 』シリーズの主題歌として起用されている。また、前シングル「雨中遊泳」から1年1ヶ月ぶりのシングル。

 「doorAdore」で荒涼とした砂漠のような世界観を見せたPlastic Treeだが、今作はアルバムの方向性は踏襲しないままの光と疾走感を感じるナンバー。

 最新アルバムではポストロックへの接近と仄かな闇を内包しつつ、ナカヤマアキラのギターが炸裂するギターロックバンドとしての一面を覗かせた。  

 そのアルバムを経てリリースされた今作は、ゲームのタイアップの関連以外にも、前回タイアップの割と混沌さもあった「サイレントノイズ」との対比もあるのか、光と開放感を感じさせるナンバーになった。

 

2016年シングル サイレントノイズ


Plastic Tree - サイレントノイズ【MUSIC VIDEO】

 

今作のシングル インサイドアウト


Plastic Tree/インサイドアウト【MUSIC VIDEO】

 

 ドラムの佐藤ケンケンが叩く直線的な8ビートとナカヤマアキラのカッティングが冴え渡る中、長谷川正のベースは低音をしっかり聞かせていく中、堅実にボトムを支えることに徹する。まあ長谷川正はいつもそうだけどね。そこが好き。

 それは何処か今のバンドのアプローチには無いであろう懐かしさを感じさせるが、有村竜太朗の歌詞と特徴的な声が乗ることで決して懐古的にはならない。

 

”風の中 何問いかけたの? ちっぽけな気持ちが揺れてた

なみだ目でいつもどこ視てた? あい言葉 思いだせないなぁ

平常時で正常値だ 感情のパルス

自画像は色褪せる あらたな花を飾っても”

 

 有村竜太朗の歌詞が他の数々のヴィジュアル系バンドと違うのはその言葉遣いもだ。

彼はヴィジュアル系にありがちな大仰な言葉は基本的には使わず、日常にある平易な言葉から非常に詩的な言葉を紡ぎ出す。作家で言うなら銀色夏生が近いだろう。

 しかも、歌詞に非常に現実感があるのも特徴で、「新宿」「千葉」など特定の地名がしっかり登場する。このような表現はcali≠gariと並んでヴィジュアル系の歌詞表現を大きく変えたと僕は認識している。

 更には音の面でも、90年代ヴィジュアル系が基本的に影響されているハードコア・パンクヘヴィメタルストパンに加えて、シューゲイザーオルタナティブ・ロックに影響された、ともすればヴィジュアル系バンドとは思えないような独特な音を産み出す。しかも、2009年に正式加入した新ドラマー佐藤ケンケンが持ち込んだポストロック的な要素を取り込み、その音像は唯一無二である。

 そんな彼らが最新シングルとして選んだサウンドはビートロックとも取れるような直線的なロック。それはまるでBOØWYを思い起こさせる懐かしさ。

 まあ言うて彼らのバンドキャリアは結成26年目だからね。バリバリの世代か。特に活休もないのほんと凄い。

 もちろんバンド自体はそういうジャンルとは違うのだが、やはり彼らもそういう音楽に影響された世代なんだろうな、と感じさせてくれるのが微笑ましくなった。

 

”誰かの夢の続き残して

夜が朝に変わるの インサイドアウト

昨日と違う世界の青が 映ってる気がしたら

深呼吸 目が覚める 蜃気楼 手招いてる”

 

 歌詞の中では特にこの部分が本当に好きで、朝焼けを感じさせる。それにしても相変わらず有村竜太朗は少しの言葉だけで情景がありありと浮かんでくる…。

 

 キレキレのカッティングからの開放感あるサビ、そして複雑な展開を挟むこと無く一気に駆け抜ける疾走感は大きな魅力である。そこに迷いや不安はない。

 Plastic Tree流の翳りを帯びながら疾走していくさまは、今のバンドの状態の良さ、そいてある種の懐かしさとバンドの未来を感じさせてくれる1曲となった。

 

2.灯火 作詞、作曲:長谷川正 編曲:Plastic Tree

 こちらも同ゲームのエンディングテーマとして制作された。

 表題曲とはうって変わって憂いを全面に押し出したバラードナンバー。

 アコースティックギターの美しい音色と有村竜太朗の儚げな声が美しく弾き語りを思わせるのだが、クラシカルなピアノとストリングスを打ち込みで全面にフューチャーしたのはギターのナカヤマアキラこれがめっちゃ綺麗。

 これにより曲がスケール感を帯びるし、何よりもさらに美しく聴こえる。インタビューでも言っていたのだが、どことなく映画のサウンドトラックにありそうな雰囲気すら漂う。

 

”逃げ出せない哀しみなら どこまでも側にいるよ

巡る星いつか僕ら 繋がったまま沈んでいけたらな”

 

”想い出に傷つくのは あやまちが絡まるから

笑う君その安らぎ

よぎる刹那耳をかすめたハレルヤ”

 

 何処か切なげながらも温かみがある歌詞。マジでPlastic Treeは詩集を出してほしい。

 

 ここでPlastic Treeの特徴なのだが、4人全員で歌詞を書くにも関わらずかなり統一感がある。長谷川正はリーダーでありPlastic Treeの結成メンバーだから当然といえば当然なのだが、1番新参の佐藤ケンケンも「雨音」などのようにとてもPlastic Treeらしい歌詞を書き上げてくるのは驚きというほかない。

 

雨音

雨音

  • provided courtesy of iTunes

  ※雨になったら必ず聴きます。

 

 このように彼らの持つ独特の美意識が貫かれながらも実は少し新しい試みで作られたこの曲の美しさにみなさんもぜひ浸ってほしい。まず映像が凄い好きです。


Plastic Tree/「灯火」MUSIC VIDEO

 

最後に

 昨年は推しのシングルやアルバムがたくさんリリースされたのだが、Plastic Treeは僕が最も好きなバンドの1つであり、恐らく一生聴き続けるんだろうなと思えるバンドでもある。

 他にもCOALTAR OF THE DEEPERSがまさかの新譜を出したり、BUCK-TICKDIR EN GREYがアルバムを出したり、X JAPANは毎年恒例の新譜チャレンジ失敗をしたりと、書いてたらキリがないがリスナーとしてはとても充実した1年となりました。

 Plastic Treeを元々好きな人もそうだが、このバンドはヴィジュアル系のリスナーではない方々に訴求する力が大きいと思うのでそういった方々も彼らの音源を手にとって聴いてほしいと思う。

 

追伸

全然関係ないけど、今年のX JAPANアルバムチャレンジではどんな発言が出てくるか楽しみです。

 

今を生きる果てにたどり着いた王国~黒夢「黒と影」(2014)

はじめに

 音楽を聴く人はその過程で単純な音だけではなく、その背後にある文化や生き様を学ばせてもらうことも多いだろう。

 僕にとっては黒夢もそういったバンドの1つで、中学2年の頃に好きになって以来、そのバンドの生き急いでる様や今を大事にする姿勢は僕の生き方に大きな影響を与えている。

 音楽的には、黒夢を通してトランスレコードを知ったり、ポジパンやパンク・ハードコア・パンクに興味を持ちどんどん掘り下げていくなど自分の今の知識や音楽的興味の大きな基礎になっている。

 彼らの音楽は活動を通して目まぐるしく変化していったし、その後もボーカルの清春も過去にとどまることなく、今の自分にとって最高にカッコいいものを追求し続けている。

 そんな黒夢が再始動後、最後に出したアルバムを今一度聴き返しながらその魅力に迫っていきたいと思う。

 

黒夢「黒と影」(2014)

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  1. ZERO
  2. ROCK ’N’ ROLL GOD STAIR
  3. I HATE YOUR POPSTAR LIFE
  4. CLARITY
  5. A LULL IN THE RAIN
  6. FREE LOVE, FREE SEX, FREE SPEECH
  7. MAD FLAVOR
  8. ゲルニカ (Album ver.)
  9. SOLITUDE
  10. BLACK HOLIDAY
  11. CALLING (Album ver.)
  12. 黒と影
  13. KINGDOM (Album ver.)

 

黒と影 (CD+DVD) (初回生産限定盤)

黒と影 (CD+DVD) (初回生産限定盤)

 

 

※通常盤には14番目の曲としてLEEPがありますが、僕は初回限定盤しか持っていないので今回は割愛します。

 黒夢は1991年から1999年まで活動した日本のロックバンド。2009年に一夜限りの再結成を果たし、2010年に本格再始動。2015年以降は実質活動休止中。

 彼らはその活動の中で大きく音楽性を変化させていき、再始動後もリリースした2枚のアルバム(2011年にリリースした「Headache and Dub Reel Inch」と今作)でも音楽性を全く違うものに変化させている。

 今はまた深い眠りについている黒夢だが、そんな彼らが生きた今は一体何だったのだろうか?そんなことを考えながら1曲ずつ、そして初回限定盤にしかないある特典を見ていきたいと思う。

 特別記載のない曲のドラムはcoldrainのKatsumaなのだが、彼のドラムがまためちゃめちゃカッコいい。coldrain自体が名古屋のバンドなため黒夢と縁があったり、トリビュートに参加してたりしたのだが、ソレを差し引いてもめちゃめちゃ上手い。そら清春に可愛がられるわけだ…。近年では色々なサポートの仕事でも見られるあたりその実力が伺い知れる。

 

 全然関係ないんだけどさ…

このアルバムジャケットめちゃめちゃかっこよくない?

 ついでに通常盤もかっこよくない?僕は持ってませんが…。

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ちなみにアー写もカッコいい。何から何までカッコいい。

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(左がボーカルの清春、右がベースの人時)

 

更に更に…

アルバムトレーラーまでくっそカッコいい。何だこのバンド。


黒夢 / 1 .29 new album 『黒と影』 trailer

 

1.ZERO 作曲、編曲:人時 

ZERO

ZERO

  • provided courtesy of iTunes

 

 アルバムの始まりはベースの人時作曲のインストナンバー。

ベースの音作りと淡々としたフレーズの中にノイズが効果的に使われ、静かな始まりを感じさせる。

 ここの部分はデジロック的な作風だった前作の「Headache and Dub Reel Inch」を彷彿とさせる。

 そこにドラムとギターがユニゾンに近いような形に絡んでくるが、その中で人時のベースが冴え渡る。

 こういうのを聴いてると人時って凄いベーシストなんだなと感じる。ベースのフレーズがどれもコレもカッコいい。

 徐々に曲が盛り上がっていくのだが、そのテンションを殺すことなく2曲目に繋がっていく曲順も含め見事である。

 

2.ROCK ’N’ ROLL GOD STAIR 作詞、作曲:清春 編曲:清春、三代堅

ROCK'N'ROLL GOD STAIR

ROCK'N'ROLL GOD STAIR

  • provided courtesy of iTunes

 

 ドラムロールから始まるこの曲は、2010年に始動したSADS第2期に通じるようなヘヴィさと黒夢がずっと持っていたポップさを併せ持っているように思う。

 ギターもドラムもそこまで複雑なことはしていない。しかし、その裏でベースの人時がガンガンに動き回っているあたり、やっぱりコレが黒夢なんだよなあ…。って思わせられる。

 ちなみにドラムはtoethe HIATUS、セッションドラマーとして活躍している柏倉隆史であり、ギターはペトロールズや東京事変で素晴らしいギターを奏でてくれている長岡亮介

 曲を壊さない中でのドラムのハットやオカズの入れ方はものすごい巧みだし、歌うドラマーにふさわしいリズミカルなフレーズを連発してくる。

 長岡亮介はもともとカントリーやソウル、ファンク系のギターを好むはずだが、今回はガッツリ黒夢に合わせてきている。特にギターソロは黒夢に合わせてきてる中にもスライドを入れていくあたり聞き所が満載である。

しかし、どこからこんな人脈が…?と今も思っている。

 編曲は元M-AGEであり、清春のソロでも長年編曲に携わっている三代堅(みよけん)。清春はソロと黒夢を分ける気はないのだろうなとこういった細かいところから感じることが出来る。

 もちろん清春は言うまでもなくくっそカッコいいのだが、決してネガティブな意味ではなく歌詞が昔と異なるなとはいつも聴いていて思う。

 

”右手に折れた刃 独白、余生、前途

目を見開いて笑う 高揚した素手

 

 昔はもっと直接的な歌詞が多かったし、この変化は実はかなり大きな変化のはずである。

 しかし、清春の歌の強烈な個性と作曲のポップさで前述のミュージシャンたちを含めて全く散漫にならない。

  約3分の中に聴きどころが詰まっている軽快でロックンロールなポップナンバーでアルバムの序盤のつかみとしてはバッチリ。

 

3.I HATE YOUR POPSTAR LIFE (Album ver.) 作詞、作曲:清春 編曲:清春、三代堅

I HATE YOUR POPSTAR LIFE(Album ver.)

I HATE YOUR POPSTAR LIFE(Album ver.)

  • provided courtesy of iTunes

 

 はい来ましたアルバムの序盤の最強ナンバー。カッコよさの具現化。

 

タイトルからして攻撃的だが、そのタイトルに負けることなく清春の歌い方も歌詞も攻撃的。

”You will surely give up this bad dream.

Yeah, you remember this bad dream again.”

 後期黒夢に通じる刺々しさを感じさせる序盤の歌詞が見事に炸裂している。

 

 ギターはdownyunkieなどで活躍していた青木裕

 日本の音楽に多大な影響を与え、もちろん清春にも大きな影響をもたらした伝説的ロックバンドDEAD END。そのボーカルMORRIEのソロでも彼は素晴らしいギターを聴かせてくれていた。

 全て過去形になってしまったのは昨年急性骨髄性白血病で亡くなってしまったからである。めちゃめちゃショックでした。

 上記以外でも本当に素晴らしいギタリストだった…。そのうちdownyとかそっちの紹介もしようかなと考えている。

 話を曲に戻すと、今回は彼の普段弾くインプロヴィゼーション的なギターではなく割とオーソドックスな雰囲気がする。もちろんギターソロやフレーズ、出す音はかなり独特でカッコいい。

 ドラムはSUNS OWLや地獄カルテットのドラマーでもあり、数々のアーティストのレコーディングにも参加、そして2010年以降のSADSでもドラマーを務めているGO。

 清春との出会いは2009年の一夜限りの黒夢再結成だったのだろうと思っているのだが、力強くストレートなドラムはそのアグレッシブさでバンドサウンドをガンガンに前へ前へ駆り立てていく。

 

そして、人時なのだが…

 

コレがヤバイ。某L'Arc~en~Cielばりに臆することなくギターを喰いに行ってる。

 

 そらキャリア的には先輩だし遠慮することもないのだろうが、黒夢時代を彷彿とさせるそのアグレッシブなベースはブランクもなにも一切感じさせることがない。正直こんがガンガン前に出まくるベーシストだとこの作品聴くまでしっかり認識できてなかった。

 ベースのフレーズも音も最初から最後までカッコいい。

 

 そして、清春なのだが…

この人ほんとに40代か(当時)?めちゃめちゃアグレッシブだぞ?

 強力なバックの面々に一切負けることなく、ひたすらに刺々しく、ソレで居ながらポップにこの曲を彩っていく。

 

”I told fxxk off!! 手を出した?

降り止まない銀のテープ

どう悪を? 腹に「Do you love me?」

You gotta feel it! I hate star life.

Your star life.

Your star life.

Your star life.

Hate, star life.

Hate, star life.

Hate, star life.

Popstar life.”

 

 後期並みに尖りまくりである。ソロとは別人としか思えないレベルで方向性が違う。ちなみにこの後のギターソロがめちゃめちゃかっこいい。

そんなロックアイコンとしての強烈なカッコよさを誇示しながら、黒夢は約3分を突き進んでいく。

 

 ぶっちゃけこの曲までで体感的には5000兆円が口座に振り込まれるので、約6000円の初回限定盤と考えると4999兆円の得である。

超お得だね。ちなみに、シングル盤だがPVを見ると追加で1000兆円くらい入ってくるぞ。


黒夢 / I HATE YOUR POPSTAR LIFE (MUSIC VIDEO FULL)

 

4.CLARITY 作詞:人時 作曲:清春 編曲:人時

CLARITY

CLARITY

  • provided courtesy of iTunes

 

 アルバムの序盤の疾走感あふれる曲の中でも速く短いナンバーであり、なんとおおよそ2分半。

 パンキッシュと言うよりハードコア・パンクメタルコアに通じるようなハイスピードなその攻撃性は否が応でもリスナーの血湧き肉躍らせる。

 人時のベースが強烈に暴れまわるのだが、間奏で光る人時のベースソロも文句のつけようがないほどにかっこよく。良いフックになっている。

 ギターはGOと同じく2009年の一夜限りの再結成以降、SADSの再始動やソロでも長年のパートナーになっているカイキゲッショクK-A-Z。低音がゴリゴリ効いたギターがリフを刻みながら極悪に暴れまわる。

 ドラムは今や海外でも人気を獲得し、日本を代表するメタルコアバンドになったCrossfaithTatsu。

 そのドラムは要所要所でオカズをはさみながらもとにかく速く力強く、ラウドロック勢のフィジカルの強さを感じさせる。

 清春の歌唱は前曲にまして攻撃的で前のめりながら、どことなくオイパンクを彷彿とさせる。

 息つく暇もなくハイスピードで駆け抜けていくその様は音の重さも相まって、後期以上に凶暴に思える。まあ、音像がほぼSADSってのは気にしないゾ。

 アルバムの前作がデジロック的な作風であったことを踏まえると、今作はその生々しい音作りに驚かされるばかりだが、とりわけ音の重さが目立つ。

 同じところに安住しない、雑に言うと飽きっぽい今を生きている清春の性格が反映されてるのだが、そのどれもがめちゃめちゃかっこいいから良いのだ。

 

”希望的観測 Figure laughing us.

未来的観点 笑いだす影

俯瞰的憶測 くだらないメッセージ”

 

 初めて聴いたときに今までの言葉遣いと違うなと感じたのだが、実はこの曲が人時唯一の作詞曲。やはりそれは人時と清春の関係性の変化が関係してるのだろう。

 

 それを知ってから聴くとお互い大人になったなあと少ししんみりしました…。ハイスピードナンバーなのに…。

 

5.A LULL IN THE RAIN 作詞、作曲:清春 編曲:人時

A LULL IN THE RAIN

A LULL IN THE RAIN

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 今までの流れとは打って変わって、メロウさと軽快なリズムで歌メロが際立ったナンバー。

 どことなく哀愁が漂うのは、清春の歌い方以上に歌謡曲的な雰囲気の漂う作曲に依るのだろうか。

 ラウドロック的な勢いと重さが強調されてきた今までのアルバムの流れとは全く違うカッティング主体のギターが耳に心地よい。

 ちなみにギターはスカ・パンクバンドの大御所KEMURIのギターである田中‘T’幸彦

どこで交流があったんだろうと考えていたら、再始動前最後のアルバム「CORKSCREW」でガッツリ関わっていた。こういうところから繋がっていくのは面白い。やっぱり曲に合わせてギタリストを選んでいるのだろう。ギターソローのキャッチーさがとても耳に残る。

 ドラムはMR.ORANGEchocolate fuzz manicsTAKUYA and the Cloud Collectors(JUDY AND MARYのTAKUYAのバンド)かどしゅんたろう。

BAROQUEの「PLANETARY SECRET」でドラムを務めていた、と言ったほうがこちらのファンにはしっくり来るのだろうか。chocolate fuzz manicsではギターボーカルを努めているようだが、本業はドラマーである。

MR.ORANGEではパンキッシュなドラムを叩いていたが今回はかなり多彩なリズムを叩いていてつくづく器用で巧いドラマーだと感じる。

 ベースの人時の跳ねるベースラインがいいアクセントになっており、本当に人時は素晴らしいベーシストだということをここでも再確認できる。

 歌詞も今までのとは違いかなり叙情的であり、

 

”レイン 笑ってる君の瞳に

今日は 朝が降りてくよ

レイン 回って通り抜ける

レイン レイン”

 

”会えるよ 夜が怖くて泣いたよね

遠くで 雨の日歌う

きっと僕の元へ帰る様に”

 

というように歌詞にも哀愁が感じられる。少しだけfeminismの頃の黒夢を感じさせる歌詞だ。清春は日本語詞がとても巧みだなと改めて感じる。

 若い頃はあまり響かなかったのだが、大人になってその良さが理解できたナンバーの1つである。ダークな雰囲気を漂わせながらも多様性をしっかり持っているのがこのアルバムの魅力の一部であることを感じることがここで出来るだろう。

 

清春の色気半端ねえな…。

 

6.FREE LOVE, FREE SEX, FREE SPEECH 作詞:清春 作曲、編曲:人時 

FREE LOVE, FREE SEX, FREE SPEECH

FREE LOVE, FREE SEX, FREE SPEECH

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 人時が作曲と編曲を担当したこちらのナンバーは、CLARITY同様約2分半という高速ナンバー。

 短いナンバー2曲とも人時編曲なのだが、どっちもベースラインが際立っているのはやっぱりベーシストなんだからなのだろうか。

 しかもこの短いナンバーの中でまたもCrossfaithのTatsuがドラムを叩いている。ツーバスドコドコしてる完全にハードコアチックなナンバーなのだが、その中で長岡亮介がギターを弾いているのが意外に思える。こんなも弾けるんだなこの人…。

 ここに来てまた高速ナンバー。CORKSCREWを彷彿とさせる駆け抜け方だが、やはり違うのは音の重さである。おそらく一番影響が大きいのはドラムなので、如何にドラムが重要な存在かがこの曲で感じられる。そして、かたやパンク、かたやラウドロックという対比が年月の長さを感じさせる。

 てかこのスピードでベース弾きまくる人時凄えな…。

 清春の歌詞はほぼ英語詞であり、後半なんて全部英語。

スピード感と語感を重視するとそういう感じになるのだろうか。確かにロックには英語のほうが向いているからな…。

 個人的には序盤の

 

”Die & Lie 豹のFlower

慈愛とヘビーダンス

Downright Lie 多く有って無いよ

リミテッド”

 

の部分が日本語と英語の語感がバッチリ噛み合ってて好き。

 

8.MAD FLAVOR 作詞、作曲:清春 編曲:黒夢、三代堅

MAD FLAVOR

MAD FLAVOR

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 ヘヴィでグルーヴ感を強調したサウンドが特徴的なミディアムテンポナンバー。

 恐らく、アルバムの中でも1,2を争うほどのヘヴィなナンバーではあるが、それを巷のラウドロックと差別化しているのは清春の歌唱法やメロディセンスに依るところが大きい。

 ラウドなのだがとてつもなくポップであり、デスボイスなどは使わないというのが1つの個性となっているし、それはSADSでも活きていると思う。それが逆によく思われないのもわからないではないのだが…。

 ギターはK-A-Z、ドラムはGOというほぼほぼSADSなメンバーだし、音像もほぼSADSなのだがカッコいいから良いのだ。多分この辺の音像が一部のリスナーにSADSじゃん!と不満をもたれる原因なんだろうな。

 ミディアムテンポということもあり、ギター以上にドラムとベースが目立ちまくる。リズム隊の重要性と素晴らしさを余すことなく堪能することが出来る。

黒夢名義で編曲するとやっぱり楽器の感じとか変わるのかな?

 

 清春の歌も溜めをうまく使っており、歌のほうでもグルーヴ感を強調させることに成功している。

 

 ”Mad flavor 暗がりの世界

Dying flavor I can believe nothing

Weird flavor ただ影と光

鼓動、劣化したら I will walk away”

 

 ヘヴィなリフとグルーヴ感のあるリズム隊にこの歌詞が乗っかると最高にかっこいい。

まさしくこれこそが、毒と華のあるロック・スターの風格。

 

8.ゲルニカ (Album ver.) 作詞、作曲:清春 編曲:黒夢、三代堅

ゲルニカ(Album ver.)

ゲルニカ(Album ver.)

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  はい出ました。再始動後の中でも屈指の名曲。100点だとか何点だとかそういう野暮な事が言いたくなくなる最高のナンバー。

 

 ギターとドラムはK-A-ZとGOというSADS布陣。というかほぼSADSだし、音像もSADSなのだが曲がマジでカッコいいから言うことがない。

 ストリングスとラウドなサウンドの兼ね合いも抜群だし、幻想的で哲学的な歌詞も最高。人時のベースもめちゃめちゃ聴かせてくる。

 今まで得てきた経験が全て集約されていると思えるばかりの渾身の1曲。

 再結成前の黒夢にはなかったような物に、音の重さがあげられるのだが、ミディアムナンバーの説得力があげられると思う。

 もちろん、ミディアムナンバー自体は昔の黒夢にも限りなくあるし、昔のsadsにもあったがやはりソロで歌物を数多く作り、歌い上げてきたものは大きい。

 勢いだけではなく、一言一言をしっかり聴かせてくるカッコよさを完全にモノにしている。

 人時のベースも昔より前に出てくるという印象があり、ラウドな音像に対して引くことなく存在を主張し続けている。日本が誇る素晴らしいベーシストの一人だと思う。

 

”それは遥か彼方で貴方へ手を振るだろう

そう此処では悲しい心は芽生え無くて”

 

 昔はこのような歌詞を書く人ではなかったのだが、そこには清春の人生経験、更には父の死も大きく関係しているのだろう。死生観や別れを意識した歌詞が昔より増えたように思う。

 そういえば「ゲルニカ」というとパブロ・ピカソがスペイン内戦中に描いた有名な絵画であるが、時代背景を反映してか負のエネルギーを集約しているように思える。

 この曲が何処まで関係しているのかはわからないが、何の考えもなくタイトルにつけるとは思えないのだ。

 特に名義ごとに音楽を作り分けているようではなさそうだし、映画のタイアップもついていたのでソレを踏まえて作った曲であることはインタビューで語っていた。

 しかし、ソレ以上の意図は恐らく各々で想像するしか無いのだろう、そしてひとりひとりが違う解釈になるのだろう。

www.barks.jp

 曲そのものだけではなくPVもカッコいいのも黒夢の特徴だが、黒を貴重にしたファッションや影をうまく使った照明が素晴らしい。さらに現代舞踏が映像に挟まることでアート性の高いPVになっている。


黒夢 / ゲルニカ(MISIC VIDEO FULL)

 

 かっこいいわぁ…。

 

9.SOLITUDE 作詞:清春 作曲:人時 編曲:黒夢是永巧一

SOLITUDE

SOLITUDE

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 イントロがベースから始まるミディアムナンバー。

 アルバムの中では音が重いほうではないが、そのダークさとまるで鬱蒼と茂った森のような仄暗い闇を漂わせる様はソロっぽくもあるが、初期の黒夢の香りを少しだけ漂わせていると思う。

 ギターは清春ソロではすっかりおなじみになった是永巧一

 ロック・フュージョン系の出自のギタリストレベッカのライブやレコーディングに一貫して参加している他、浜崎あゆみTHE ALFEE今井美樹安室奈美恵など数々のアーティストのレコーディングに参加。

はたまたKalafina水樹奈々などアニメ系関連の仕事も豊富で、あらゆるジャンルを弾くことが出来るオールラウンダー。

 多分、この人を話すだけで1つの記事ができるほど幅広いレコーディング経験を持つ名ギタリストであるのだが、編曲の経験もかなり豊富。調べてみたらめっちゃビビるぞ。

 ドラムはdowny秋山タカヒコdowny自体複雑なアンサンブルと前述した青木裕のギターが冴え渡る素晴らしいバンドなのだが、秋山タカヒコの演奏力も素晴らしく、複雑なリズムも難なく叩くことが出来る。

ポップな曲からメタルやジャズも叩くことの出来る幅広さも兼ね備えているためか、バンド以外の経験も豊富でスキマスイッチ大塚愛ナオト・インティライミなどの数々のJPOPアーティストのレコーディングにも参加した経験がある。

現在はdownyの他にBUCK-TICK櫻井敦司がフロントマンを務めるバンドTHE MORTALのドラマーも努めている。

 人時のベースラインはどの曲でも動き回っているが、バンドの音がそこまで重くないからかベースの音がいつも以上にはっきり聴こえてくる。更に、歌謡曲的な歌メロに寄り添うベースラインの気持ちよさを感じられる。単純にギターとドラムがものすごい巧いというのはおそらく大きいだろう。

 清春の歌メロが本当に歌謡曲で、こちらはかなり清春ソロの楽曲に近い。というか多分入ってても違和感がない。

 ソレで居ながら、翳りと仄暗さを帯びているところが初期の黒夢を感じさせてくれたりもする。初期の黒夢はもっとブラックメタル的だしASYLUMっぽいけど…。

 

”とめどなく流れる涙、どうあれ独り

哀しみよ剥がれて、炎に撃たれ闇と会えたなら

超えてゆこうね貴方に

会えるだろう”

 

 この辺の歌詞とか清春FOREVER LOVEとか「madrigal of decadence」とかに入ってても全然違和感がない。ソロとかSADSとか黒夢とか分けて考えるのは無意味なんだろうな、と改めて識ることが出来るナンバーである。

 

10.BLACK HOLIDAY 作詞:清春 作曲、編曲:人時 

BLACK HOLIDAY

BLACK HOLIDAY

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 独特のキメとギターの音やフレーズの展開が癖になる曲。

 ギターは西川進。この方も是永巧一と同様数多くのアーティストのレコーディングやライブ、作曲や編曲やサウンドプロデュースに参加している、モッズファッションや赤く染めたマッシュルームヘアーがトレードマークのベテランギタリストである。

 

 最初にサポートとして名前を馳せたのは椎名林檎の「無罪モラトリアム」と「勝訴ストリップでの楽曲だったと記憶してるが、女性のオルタナティロック系ならこの方がまっさきに名前が上がるであろう凄いギタリスト。椎名林檎の初期イメージなんておそらくこの人の音が関わってるところも大きいし。

 他にも阿部真央小南泰葉大森靖子など様々なオルタナティブロック系の女性シンガーと共に仕事とをしている上、アイドル系やヴィジュアル系、アニメソングやニコニコ動画系などでのプロデュースも超多彩。ある意味時代を反映し象徴するギタリストとも言える。最近だとWii Uゲーム「スプラトゥーン」の楽曲まで演奏を担当している。多彩過ぎる。

 

 是永巧一がオールラウンダーで綺麗なギターを弾くギタリストなら、この方は幅広いプレイスタイルながらも感情直結型の荒々しいギターを弾くのが特徴である。

 ギターの構えが独特である上、ブリティッシュサウンドを軸にしながらも非常にノイジーでカッティングが荒々しく1曲でピックをダメにするほどである。しかもエフェクターも多用する。音が超目立つな?

 前曲同様ドラマーは秋山タカヒコなのだが、こんな2人と黒夢がどんな化学反応を起こすかと言うと、コレが凄い。

 秋山がどっしりした音と単調さを感じさせないフィルインを要所ではさみながらしっかりボトムを支え、人時がメロディアスなベースでメロディを彩る中に西川進のギターが炸裂している。

 おそらくイントロのカッティングはファズなのだろうが、その歪みが強烈でその歪みのままにカッティングを行うものだから、めちゃめちゃ目立つ。一度聞いたら忘れられない音だ。もはや主役である。

途中で流麗なアルペジオが挟まることで一切のマンネリ感を与えないのも素晴らしい。

 

 メタルと言うよりはオルタナティブロックやグランジに近いその音像は今作の多様性も象徴しているように思える。今までが割と歌謡曲とかメタル的なものばかりだったので新鮮である。

 それでいて間奏で入ってくる人時のスラップがかっこよすぎない?

 しかもギターを重ね録りしてるのか様々な音が感じられる。青木裕のソロ並みに音の情報量がじつは多いんじゃないかという気さえしてきた。

清春の歌メロはとてもメロディアスなので、情報量の多さに反してかなり聴きやすい。なんか不思議な曲だ。

 

”謀略を束で売った 汚い手、借りて売った

音楽と程遠いね 考えた能書きを

同化して解らないよ

憧れた人は居ないね 何処へ行けたとしても

太陽は笑わない”

 

 最後の部分でギターがアルペジオオンリーになり、少しずつテンポダウンしながらラストと向かう歌詞なのだが…ここでもとても尖っている。

再始動前の後期の黒夢を感じる歌詞ではあるが、後期はもっと曲自体がパンキッシュだったのでありそうでなかった曲というのが相応しいのだろう。

 

11.CALLING (Album ver.) 作詞、作曲:清春 編曲:黒夢是永巧一

CALLING(Album ver.)

CALLING(Album ver.)

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 黒夢ゲルニカカップリング曲でもあるハイスピードナンバー。

 SADSにありそうだなあ、と思わせる曲調なのだがSADSと違ってそこまでゴリゴリのサウンドではないのが違いなのだろうか。約3分という短さをダレることなく駆け抜けていく。

 

 ドラムは2曲目も担当した柏倉隆史僕の中では柏倉隆史はポストロックバンドtoe

 イメージが強いのだが、レコーディング参加経験の豊富さやthe HIATUSのメンバーでもあるわけだし、At The Drive Inのようなエモなサウンドのドラムが叩けても不思議ではないわけだ。まあ完全にエモというわけではなく、ポストハードコア的な要素もあるんだろうけど、ここらへんの定義は曖昧なので…。 

 吉田達也みたいな複雑怪奇なリズムではないにしろ、オカズをバンバン入れ込んでて若干ドラムソロっぽくなるのが実に柏倉らしい。

坂本真綾「eternal return」でもそうなってたからね(笑)そういうところが好きなのです。

 

 是永巧一は本当に何でも弾けるんだなあと感じさせてくれるのだが、ワーミーがいい味出してるヘヴィメタル的な速弾きもあるし、リフもいちいち小技を挟んでくるし、ディストーションサウンドの効いたリフもカッコいいし…。マジで凄えなあ…。

 清春も疾走感のあるボーカルを披露するが、速い曲になるともはや日本語の発音とか英語の発音とかそんなのを分けるのはどうでもいいと言わんばかりのボーカルを披露する。

 

”Feel my calling. I keep calling.

Till you hear that. So I¥m calling. I¥m calling it.

 

 サビはこのフレーズを連呼しまくるわけだが、まあ1回じゃ聴き取れない。そういうタイプの歌手じゃないからかっこよければオッケーです。そうなのです。

 

 そして人時のベースがマジで休む暇もない。速い中でもきっちりスライドを入れたりするのもニクい。全曲で言えることだがベースの音作りがめちゃめちゃかっこいい。曲はメンバーが全く違うのになんかまあSADSでやってそうな気もするけど…。

カッコいいから良し!

 

12.黒と影 作詞、作曲:清春 編曲:黒夢、三代堅

黒と影

黒と影

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 アルバムの表題曲にして恐らく最も独特なナンバー。

 ギターが青木裕、ドラムが柏倉隆史という布陣の中制作されたのだが、歌メロもギターもドラムも今までの黒夢で一切聴いたことがない感覚である。ベースはそこまで動き回るわけではないが、今回は支えることに徹しているのだろう。

  柏倉のドラムは恐らく今までのアルバムのナンバーの中で最もtoeに近いまさに「歌うようなドラム」。オカズ入れるわ、リズムを変則的に叩くわでドラムだけで何回でも聴いていられる。

 青木裕のギターは本当に強烈でイントロのフレーズからなんだか摩訶不思議である。そして、非常に情熱的なギターソロを聴かせてくれる。

 清春の歌詞もかなり象徴的であり、

 

”這い上がる、したたかよ ぬめった胴体の柄”

”一度きり、舌を切る 二度目の再現は無い

逃げ歩け、色を変え 延々と輝る皮膚”

 

黒と影と黒蜥蜴がかかってるのかな?と感じさせるものである。そして「二度目の再現はない」と述べているようにバンドのこれからを暗示しているようにも思える。

 

”黒と影が夢をくるむなら目隠しを

心に闇を纏う

黒蜥蜴は僕が解けなかった不可解を

撫で回った後 説いて 舐めるよ’

 

 ここで黒蜥蜴と述べているのだが、歌詞がなかなか抽象的で幾通りもの解釈ができそうなものになっている。こういった歌詞は近年のソロ活動の賜物だろう。

 

 青木裕のギターソロだが、変則的でインプロヴィゼーション的なフレーズが炸裂するところに彼の強烈な個性がにじむし、本当に素晴らしいギタリストであると改めて思う。惜しむばかりだ…。

 今までの黒夢にはなかったナンバーで何回も聴きたくなる。

  

 ところでクロトカゲという言葉なのだが…

黒蜥蜴、というと字義通りの黒い蜥蜴がまず最初に浮かぶ。その名の通り黒いトカゲであり、トカゲと言えば尻尾を自切することで知られている。

しかし実は数に限りがあるし完全には元に戻らない。更には傷口から細菌が入ったり、栄養失調で死ぬこともあるので命がけの行動なのだ。

 

 そして黒蜥蜴という言葉でもう1つ思い出すのが江戸川乱歩の長編探偵小説「黒蜥蜴」。三島由紀夫により戯曲化され、更には映画化もされている。キャストは数度の映像化や舞台化において、京マチ子美輪明宏中谷美紀など錚々たる俳優が演じており、名実ともに日本の文芸史に残す作品だ。

黒蜥蜴 江戸川乱歩ベストセレクション (5) (角川ホラー文庫)

黒蜥蜴 江戸川乱歩ベストセレクション (5) (角川ホラー文庫)

 

  ストーリーはあらゆる美しいものを標的とする経歴一切不明の美貌の女盗賊「黒蜥蜴」と幾多の事件を解決してきた探偵「明智小五郎」の対決がメインで、まあ怪盗キッド江戸川コナンの関係をイメージすれば良いのだろうか。

わかりやすくワクワク出来る一方、耽美的で倒錯的な雰囲気も漂う作品なのでっ興味がある方はぜひ。

  …まあおそらく後者にはかかってはいないのだろうけど、どうしてもこの2つを連想してしまうので書き加えておきたかった。多分本当に関連があるのはトカゲの方。ソレだけです。

 

13.KINGDOM (Album ver.) 作詞、作曲:清春 編曲:黒夢是永巧一

KINGDOM(Album ver.)

KINGDOM(Album ver.)

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 アルバムのラストを飾る会場限定シングルの曲であり、再結成後の黒夢ならおそらく一番の完成度を誇るミドルチューン。

 ちなみにこの曲に限ったことではないのだが、シングルは全てアルバムバージョンで収録されている。

 ギターは是永巧一、ドラムは秋山タカヒコなのだが、アルバムの中でもその存在感は群を抜いている。

 ディストーションが効いた拡がりを感じさせるギターに、手数は多くなくとも一音一音を非常に強く発するドラム。ベースもソレに連なるように一音に全てを込めるかのごとく鬼気迫る演奏。その哀愁と重たさ、執念にはもはやポストメタル的な雰囲気すら漂っている。

 清春の歌詞も非常に抽象的で、

 

”夜に詞えば 響いたのは 夢追いの弱者

消えてしまった それなんて紛い物でした

困惑を繰り返したい こう在るべき理解の海

抱いてくれる貴方に会う 過去に浚われたら”

 

と、夜と闇を漂わせるものが多い。

そして、KINGDOMの名が示すとおり…

 

”AH 気が触れる新しい盲目

AH 耐え乱れる艶かしき王国を揺らすよ”

 

 こんなフレーズもある。これを書き上げた清春の心境はどのようなものだったのだろうと思う。

 

”闇夜を裂いて鳴らしている

灯りを消して帰ってゆく

愛楽を見る人の元へまた階段を登る”

 

と何やら象徴的なフレーズが光るサビだが、愛楽(あいらく)というのは

愛楽(あいぎょう)とも読むらしく

  • 仏法をなどを願い求めること
  • 愛し好むこと

という2つの意味があるらしい。どちらの意味で使われているのかは定かではないが、

自分たちの今の確固たる姿を「王国」に例え、ファンへの感謝やメッセージをこの曲に込めているとしたらソレはとても素晴らしいことであると思う。

 実際ファンのコーラスとか入れてるからファンに向けてのメッセージもあるんじゃないかなと少しは思っている。あんまりそういう事するイメージなかったからね…。

 

 清春の艶かしいボーカルがメロディラインに絡みつき、ラスサビでは更に高みに登る。

コレほどまでのスケール感のあるバラードは以前の黒夢にはなかったし、こういう曲自体が昔の黒夢では存在しなかった。

新しい黒夢の姿を「王国」の名のもとに示したのかもしれない。

 

最後に響く大合唱もまるで聖歌のようで厳かな雰囲気すら漂う。

 

 アルバムのラスト、そして黒夢の確固たる姿やカッコよさを示すのに相応しい曲だと改めて感じた。最高の曲である。

 

 まあ、アルバムの話はここで終わりなのだが初回限定盤の話なので、特典の話もしようかと思います。後少しですが、お付き合いください。

 

特別編:THE BLACK FILM

 黒と影の初回盤タイプAについてくる特典映像。ちなみに他のトラックにシングルのPV映像もついている。

 内容は黒夢について様々なアーティストが黒夢を語ると共にライブ映像やレコーディング映像が挟まれるという40分程度のものだが、まずそのメンバーが凄いので一通り書き記しておく。

 色々凄い。闇のバンド大集合みたいな感じである。人間関係に闇があった人もいるけど…。

 しかも、この映像の数年後に更にビッグになった人たちもいることを考えるとマジで歴史遺産レベルのメンツである。恐らく今集めようと思ってももう集まらないだろう。

 他にも様々な関係者が語っているのが(多分大体清春のことだけど…)黒夢というバンドの存在の大きさを示している。

 

 後輩として語る者、同志として語る者、後輩として語る者、かつての仲間として語る者…その視点は本当に様々だが、恐らく根底の部分はブレていないと思われているのか割とイメージが散漫にはならない。

 

 深化という言葉や過去が要らなくなる、ロック・スターという象徴的な言葉が飛び出すのは。まさにカリスマのカリスマたるところを確固たるものにしてることを示している。

 

 数々のコメントがかなり象徴的で仰々しい中にT.M.Revolution西川貴教が、めんどくさい人とか長らく会って無くても時間を感じさせないというコメントに人間を感じさせるのがとてもいい。

 

 そして何よりも面白いのが色々あった坂下たけともが、結構正直に「時にムカつくこともあるけど、時に可愛くて、時に本当の優しさが見える」とか言っている点だ。そして、「一回深く関わると忘れられなくなる。」と語っている。ほんとに色々なことが起きたのがちらほら見えて微笑ましい(笑)

 

 あと、有村竜太朗のコメントがブレなくふわふわしているのが好き。

 

 そして、元々は同じシーンに居て互いにリスペクトしあっている高野哲のコメントが何処か客観的で面白い。みんなコメントは素晴らしくて面白いんだけどね。

 

言及してない人もまだまだ居ますが…

 まじでこの映像は永久保存版なので、初回Aが売ってたら絶対に買いましょう。そして自分のその目で確かめましょう。

 

 ちなみにLUNA SEAに関してはX JAPANのHIDEやSLAVEがメジャーデビュー前から目をつけていたようで教えていたらしい、HIDEの目の付け方ほんと凄いなめっちゃ凄いな…。

 

 ちなみに灰色の銀貨さんからは1人も出ていない。まあ、色々ありましたからねボーカル同士。メンバー間で交流はありそうなのに人間関係は難しいものだ…。

 

最後に

 BUCK-TICKの69を超える長さのレビューはもう書けないだろうとか思ってたら意外とあっさり超えてしまった…。

 黒夢は僕の反骨心の大きな芽生えとなったバンドだし、その姿勢もとにかくかっこいい。

 このアルバムは黒夢再結成後に清春と人時が作り上げたある種の最高傑作であり、コレこそが今の黒夢なのだと言わんばかりの圧倒的完成度である。

 ところどころ、これはソロでは?これはSADSでは?というのもあるのだが、その問い自体が何の意味持たないのだろう…。

 

 是非、いろいろな人が黒夢のこのアルバムを聴いて圧倒的なエネルギーとダークなカッコよさを身をもって体感してほしいと思っている。

 

ここまで読んでいただきありがとうございました!

食事と入院について

 僕には昔から好き嫌いがない。親にそう躾けられたというのも大きいが、僕自身が食べるのに割と貪欲なのも大きい。
 
 小さい頃は正直に言うと食に興味はなかったのだが、小学校2年生のときに顔面神経麻痺で入院して病院食を食べる機会があった。
はっきり言ってそれが美味しくなかった。それは当たり前に食事が食べきれなくて残してきた自分には大きなショックだった。
普段自分が食べているものはこんなにも美味しい物だったのかと、小さいながらに実感することになった。
 退院したときのことはよく覚えている。確かその足でファミレスに向かい、ネギトロ丼を食べた。
今思うとなんてことのない食事なのだろうが、病院食に飽き飽きしていた自分には極上の料理に思えた。

 それ以来、食事を残さなくなったし好き嫌いを無くすように努めた。昔は食べられなかったセロリやトマトや梅干し、納豆も今では食べられるようになった。幸いにしてアレルギーもないし、なんでも食べられる様になった自分とそういう教育をしてくれた親には感謝をしている。
 
 そして、食事をする環境に大きく拘るようになった。小さい頃は食そのものに興味がなかったのにそ大きな変化だなと自分でも感じる。
 大人になった今では、値の張った食事に対して味だけではなく、食事をする環境そのものを買うものだと思っている。
食事を五感で楽しむっていうのはそういう物なのかなとうっすら認識している。
ジャンクフードやチェーン店の食事も等しく好きなので、変なグルメ舌にはなってない…はず。うまいもんな、マック。
 そんなこんなで僕の中で今や食の占める割合はかなり大きくなったし、食事をすることそのものに感謝が湧くようになったのは小さい頃の入院あってだなと感じている。もう二度としたくないけど。

 まあ、アレだよ。誰かが食事を作ってくれる環境があったら感謝しようなって話でシメます。みんなありがとうとか言うんだぞ…。


 

ひっそりと産み落とされた至極の名盤~BAROQUE「PLANETARY SECRET」(2015)

はじめに

 ハイペースな更新なのですが、書きたいものがいっぱいあるからです。

 寄稿、という立場では出来ないことが自分のブログだと出来るのです。そのモチベを活かさない手はありませんよね。

 書きたいものはほんとに多いですし、優先順位をつけるのは難しい。

 そんな中で僕が近年で最も心を動かされたバンドであり、考え方や人生観に多大な影響をもたらしたこの作品を紹介することにしよう。

 

BAROQUE「PLANETARY SECRET」(2015)

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  1. PURIFY
  2. PLANETARY LIGHT
  3. DREAMSCAPE
  4. CELEBRATE
  5. SKY WALKER
  6. SWALLOW THE NIGHT
  7. SILENT PICTURE
  8. ORIGINAL LOVE
  9. MEMENTO

 全曲 作詞:怜 作曲:圭

PLANETARY SECRET

PLANETARY SECRET

 


BAROQUE - NEW ALBUM 『PLANETARY SECRET』 Trailer

  

オサレ系としてヴィジュアル系の世界に大きな影響を与えたバンドが、2人になって以降初のオリジナルアルバムであり、アートワークから歌詞カードまで細部に拘って作られている。

 2人になってしまって心配していたファンも多い中、ベースにTOKIE、ドラムにかどしゅんたろうを迎え制作されたこの1枚には実は大きなテーマがある。

 

”惑星(この世)の秘密

「夜空に広がる星々を人々の生命の光になぞらえ

ひとり一人の魂こそが

この世界を創造するうえで必要不可欠な

唯一無二の大切な存在である。

 

というのが作品のテーマ

 

生まれて初めて見た星空を思い出すかの様に

現代社会の中で見失ってしまいがちな自分自身、

生きる美しさを見つめ直すきっかけになれば、

という願いが音楽を通して込められています」

(BAROQUE) ”

 

 この壮大なテーマをたった2人でどう挑み、39分02秒の中にどうやって表現したのか

1曲ずつ見ていこう。

 

1.PURIFY 

PURIFY

PURIFY

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  この言葉について検索すると次のような意味が出てきた。

  • ~を浄化する、清潔にする、精錬する、清める、精製する

 そして、音を聴いて驚いた。そのあまりに変化に。

 BAROQUEが小文字名義だった頃はもっとポップな近年のヴィジュアル系に近く、疾走感のあるギターロックをやっていた印象だった。

 しかしそのような影は鳴りを潜め、この一曲目からすでに一気にエレクトロニカに接近し、バラード調の曲の中に空間的な圭の隅々まで神経を張り巡らしたギターの音色が響き渡る。

 それはまるで満点の星空に波紋が広がるかのような美しさ。

 そこに乗る怜のボーカルはオートチューンを大胆に用いることで、いつもよりスペーシーな印象に。

 約3分という短さながら、そのクオリティの凄まじさに圧倒される。

”1つ

星彩は生まれ

永遠の鐘鳴らして

刻をチクタク謳う”

 一番最初のこの部分がいつ聴いてもまるで詩集のように美しい言葉だなと改めて思う。

 

 アルバムの始まりとしてはかなり静かな印象だが、静謐さと包み込むような包容力を感じさせる素晴らしい曲だと思う。

 まさに「PURIFY」の名にふさわしい心を清めてくれる歌だ。

 

2.PLANETARY LIGHT 

PLANETARY LIGHT

PLANETARY LIGHT

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  昨今、絶望、厭世、孤独の歌なんてものは世界中決して珍しいことではない。

それは簡単にバーナム効果で共感を得られるのだろうし、そのような価値観の音楽は僕も好きなジャンルではある。

 しかしどうだろう?そのような表現が真に迫っていない場合、その場限りのインスタントな共感と涙に終止し、音楽が止まると忘れられてしまう。ソレは演者やリスナーにとってあまりに哀しいことだ。

 

 話を本題に戻そう。今作では圭のギターが星々のように微かにまたたき、怜のオートチューン混じりの「wake up dreamy special life」という言葉とともに、一気に弾ける。

 それは一斉に星が目覚め瞬く、どこまでも果てのない夜に響き渡る全ての人間に対する讃美歌のようだ。

 

 「wake up dreamy special life everything's gonna be alright」という歌詞に象徴されるように、そこに難しい言葉は使われていないし一切の絶望はない。

 前述したような昨今にあるテーマとは完全な対極に位置する。

 

 太宰治の晩年に「安楽なくらしをしているときは、絶望の詩を作り、ひしがれたくらしをしているときは生のよろこびを書きつづる」という言葉がある。

 確かに、絶望の詩は心に響く。しかし、内面から絞り出されない空虚な絶望は演者にとってもリスナーにとってもその日の夕食やデザートの方が遥かに重要であるというものでしか無い。

 それに需要はあるのだろうが、あまりに寂しいのではないか?

 

 対してこの曲は太宰治が言うところの生の喜びを綴った曲である。kannivalismでもそのような歌詞はあった。しかしその頃はポジティブな曲の中に見え隠れする絶望。それは暮らしに疲れてしまったかのような諦念があったのだが…。

 

 この曲はどうだろう、さらなる艱難辛苦を経て生み出されたこの曲は当時よりも強烈な説得力を帯びる。

 もちろん何を見出すのかは聞き手次第ではあるのだが、そのコーラスと冴え渡るギター、何より曲自体の持つ圧倒的なクオリティは安易な絶望の歌よりも深く人々に余韻を残すだろう。

 


BAROQUE 12/25(fri) SHIBUYA VISION 「PLANETARY LIGHT」 HD

 

3.DREAMSCAPE

 前曲のテンションをそのままに、更にアップテンポにしたナンバー。

 宇宙を感じさせる深淵で静謐な雰囲気はそのままに、圭の空間系エフェクトを多用したギターがどこまでも無限に拡がる中に怜の歌声がどこまでも伸びやかである。

 その美しさは本当に夢のような情景であり、宇宙を旅するかのような遥か彼方を感じさせる。

 ディレイとクリーントーンを駆使したそのギターサウンドには昔のヴィジュアル系バンドが持っていたものを感じさせるし、ポップなメロディと伸びやかな歌声と合わさるといい意味で嫌なことをすべて忘れさせてくれる。

4分半弱の夢の世界に手を惹かれ、幸福と希望に身を浸すことが出来る。

 そして、曲が止まっても心の中に残り続ける余韻は、ことあるごとに生きる活力を与えてくれるに違いない。

 

 

”手掲げて

give a cry a cry

滾る想い

解き放て 輝く先へ”

 

 この「輝く先へ」からの声の伸びと、そこからのギターソロが鳥肌モノだから聴きましょう。


BAROQUE - DREAMSCAPE (Full ver.)

 

4.CELEBRATE

CELEBRATE

CELEBRATE

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 こちらはゆったりとした曲調のなかに静謐な電子音のヴァイオリンのようなギターが響き渡る優しいナンバー。

 キーボードの音色も光るし、これまたオートチューンを効果的に使った浮遊感のあるボーカルとの相性も抜群にいい。

 ドラムの手数は決して多くないが、要所要所に挟まることで曲の中でいいアクセントとして働くほか、終盤のシューゲイザー的な展開とギターサウンドが恍惚で心地よい。

 聞けば聞くほど虜になる曲である共に、2人になったBAROQUEの持つ圧倒的な表現力とポテンシャルには驚かされるばかりである。


BAROQUE - CELEBRATE (Full ver.)

 

"旋律の方舟 calm the sky  calm peace

奇跡の音 鳴り響く ring a bell  ring a bell

泡沫の音 抱かれ calm sky  calm place

beautiful day celebrate celebrate

sing a song for you celebrate celebrate"

 

 後半の英語詞は数回繰り返されるが、約5分という長さの中にある歌詞はこれだけである。

 歌詞を詰めないことで、曲そのものが持つ余韻やギターやボーカルの美しさ以外にも、ベースやドラムの調べなどを集中して聴くことが出来る。

 アルバムの中での位置も含めかなり計算されて練られているのだろうなと思うとただただ敬服するばかりである。

 

5.SKY WALKER

SKY WALKER

SKY WALKER

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 始めに言っておく…

僕はこの曲がめちゃめちゃ好きなので寝る前に聴いてます。マジです。

 いや、ほんとに言いたかっただけなんだけどそのくらい好きなんですよね…。

 

  まず、空間系エフェクトのばっちり効いた圭のギターサウンドが本当に美しい。

 エレクトロニカ的な要素とギターサウンドの組み合わせとして、コレ以上の正解は存在しないと思えるレベルで全ての歯車が噛み合っている。

 そこに怜のボーカルが合わさることで、まさにタイトルに相応しい強烈な浮遊感を生む。

"teleportation recreation

静謐のカーニバル

playing

starry blue

密やかに弧を描く月虹

浮遊 歩く

teleportation illumination

真夜中を歩く

sky walker

imagination starry blue 

wonder wonder wonderland

walk"

(歌詞からすでに浮遊感があるもんな…。)

 2分半という時間、リスナーは現実の全てから離れ果てのない美しい夜空を旅することが出来る。

 ソレほどまでの強烈な没入効果があると感じている。

 後半から入ってくるガッチリとしたバンドサウンドディストーションギターがさらなる世界へとリスナーを誘うようで心地よい。

 そして、それらが活かせるのは怜の声質がぴったりそこにハマっているからであり…。

 めっちゃ良いぞ!!

 

6.SWALLOW THE NIGHT

SWALLOW THE NIGHT

SWALLOW THE NIGHT

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 アンビエントやミニマルミュージック的な要素が強い今作の中で、おそらく唯一のロックサウンドが全面に出た曲であり、今までのbaroqueも感じさせるナンバーである。

 といっても世界観を決して壊すことはなく、ギターの印象的なフレーズがバンド全体を牽引する中、どこまでも駆け抜けていく。

 そのギターフレーズに合わせてボーカルもベースもドラムも、ひたすらに走り抜けていく。途中に入るフランジャーの効いたギターフレーズが良いフックになっている。

 しかし、その疾走は逃避ではなく、むしろ未来へ向かって更にギアを上げていくという強い意志を感じさせる。

 

”彼方に霞む 光と影

水平線に明日を創るまで”

 

 このような歌詞から見られる通り、そこに迷いや恐れは感じられない。

 

 個人的はアルバムのクライマックスへと勢いをつけていくと共に、2人になったことへの不安を抱えているリスナーに対する意思表示でもあったのではないかと思っている。

 

7.SILENT PICTURE

SILENT PICTURE

SILENT PICTURE

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 全編に及び希望を感じさせるアルバムの中で唯一曲調にも歌詞にも陰が垣間見える曲。

 ロングトーン主体の圭のギターが非常に印象的ではあるが、実はドラムのドラムンベース的なフレーズとしっかりとボトムを支えるベースが光っており、ボーカル以外にも聴きどころが満載である。

 コレほどよく出来た曲はなかなか無いぞ…。

 怜はそこにテンションを抑えたボーカルを合わせ、曲に静謐さをプラスしていく。

オートチューンによって無機質さが加わることも大きな要因だろう。

 

”求めて 求めて 求めて

偽りのない終生の愛を

いつまでも抱いて いつまでも抱いて”

 

 深い思考の宇宙を彷徨う中でも愛や救いを求め、また他者に与えていこうとする姿勢は聴く人の胸を打つに違いない。

 記憶の断片の海に沈みながらも、そこに留まらないという姿そのものが今作のBAROQUEが示したいことの1つなのかもしれない。


BAROQUE – SILENT PICTURE from LIVE Blu-ray & DVD ALL OF THE LOVE, ALL OF THE DREAM

 

8.ORIGINAL LOVE

ORIGINAL LOVE

ORIGINAL LOVE

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 優しさと包容力に満ち溢れたアンビエント要素の強いナンバー。

 この曲とアルバム最後が今作のアルバムが示したいことの最終形を示してくれている、と僕は思っている。

 大きな変化をしつつも包み込まれるようなギターサウンドやボーカルの伸びやかで優しい歌声は、アルバムの最初から今まで決してリスナーを突き放すことはない。そして、これからもそうであると言わんばかりの至極のバラード。

 コレを聴いたときにわけもなく涙を流してしまった経験があるが、それは決して絶望に満ちたものではなくむしろ真逆である。

 希望と祈りに満ちた涙は人を前に進める大きな力がある。僕はそう信じているし、この曲に限らずアルバム全てにソレが通底されている。

 冒頭に述べたテーマに対して、一切のブレがない。

 その中でも、この曲はBAROQUEの持つ母性を象徴してるように思える。そして、その愛はひとりひとりの人に向けられている。

 

"I love you

asleep awake

swear tomorrow"

 

 BAROQUEがここまで壮大なスケールの音楽を作ると思っていなかったリスナーもいるのではないか?

 星の降る夜の中で奏でられる母なる暖かな歌とともにアルバムは次でついにクライマックスを迎えるのだ。

 

9.MEMENTO

MEMENTO

MEMENTO

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 今作のシメでありクライマックスでもある、BAROQUEの産みだした時代を超えるバラード。そして唯一オートチューンを使用していない曲。

 ギターの静かなアルペジオから、怜の歌声が乗る。

ソレはまるで世界そのものに語りかけているかのようだ。

 

 そこから、バンドサウンドを全面に押しだし圭のギターは様々なエフェクトを用いながら壮大なスケールと様々な奏法によってアルバムの世界を縁取り、完成させていく。

 

 ベース、ドラム共にアンサンブルを保ちつつ他の曲よりも主張してくる印象がある。

 しかし、やはり怜の歌声はりんとそびえ立つ大木のように一切ぶれることがない。

 しっかりとした指標があるからこそ、楽器隊は様々なチャレンジが可能なのだろう。

 

 ラスサビの部分ではマーチングのようなドラムと安定したベース、ギターの澄み切った音がどこまでも拡がりゆく音像の中、

 

”四季彩は謳う

美しく咲き誇れよ

抱き上げた君へ

全てを与えよう 捧げよう”

 

と歌われ、一気にシューゲイザー的な甘美なノイズが曲を覆っていく。

 

 それは39分02秒という時間に渡る旅の終わりを意味しているが、それは決して哀しいものではなく、夜明けや始まりを感じさせる優しいものだ。

 これほどまでに優しさと力強さを感じるバラードを聴くと、彼らのやりたいことに納得せざるを得ないし、何よりも心の中が温かい気持ちになる。

 

 この曲を聴けばこれからのBAROQUEも大丈夫だろうときっと安心すると思います。

 

最後に

 実はこのアルバムからBAROQUEを聴き始めたのだが、自分の抱いていたイメージとあまりに違うことに驚いたのだ。

 とても、落ち着いており、一切の隙がない。 

 いわゆるオサレ系の頃は浮ついていたところもなくはなかったし、この前のアルバムは少し若返りすぎていたと今は思う。

 

 そして、色々なことが起こり2人になった中で、彼らが最初に提示したのがこのアルバムなのは本当に納得だし、クオリティも今までのものと比較しても段違いにいい(昔が低いわけでは決して無い、むしろ良質)。

 

 このアルバムがプロモーションも控えめにひっそりと産み落とされたのは確かだが、

そのクオリティは数あるバンド音楽の中でも超特級品であり、エレクトロニカアンビエント系の音楽としても歴史に名を残すべき名盤だと思う。本当にそう思う。

 

 ここまで、アルバムのテーマやアートワークとズレがない作品も珍しいなと思うし、彼らの音楽に対する姿勢の真面目さが垣間見える。

 

 BAROQUE名義になって以降、あらゆる面でアート性が高まったのかアルバムのアートワークもライブの告知フライヤーもとてつもなく美しい。美術品として鑑賞していられる。

 

 ちなみに、コレ以降のBAROQUEも素晴らしくて、L'Arc~en~Cielのkenをプロデューサーに迎えたことで更にクオリティを跳ね上げていくのだからある種の狂気を感じる。

 近年のBAROQUEはあんまり知らないな、という人もいわゆるヴィジュアル系というジャンルには疎い人も、このアルバムを是非聴いてほしい。

 

 君の世界は聴く前と後で一変するだろう。

 

 

バケモノの領域に両足突っ込んでる絶対女王の本気~水樹奈々「NEVER SURRENDER」(2018)

はじめに

 超ハイペースで記事を書いてます。いや、いざブログを始めると書きたいことが多くて…。

 坂本真綾を書きました、BUCK-TICKも書きました、JUDY AND MARYも書きました…。水樹奈々を書くべきでは?

 そんな馬鹿なことを唐突に思いついて、本日3本目の記事になります。

 実際水樹奈々さんが大好きなんですよ。

 高2くらいにNHKのアニソンスペシャルを見てドハマリして本格的にアニメにもハマり、そこからはもう沼ですよ…。

 書籍買ったり、都内だったら聖地巡礼したりしてますね、いまだに。

 僕みたいな人間は水樹奈々のファン層的には異物なんですけどだからこそ面白い物が書けるかもしれない!という熱意でひたすら突っ走りたいと思います。

 

水樹奈々「NEVER SURRENDER」(2018)

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水樹奈々『NEVER SURRENDER』全曲試聴動画

  1. NEVER SURRENDER
  2. GET BACK
  3. サーチライト
  4. 嘆きの華

 

1.NEVER SURRENDER 作詞:水樹奈々 作曲、編曲:加藤裕介

 こちらの曲は劇場版アニメ「魔法少女リリカルなのは Detonation」 の主題歌。

 なのは曲はいつも素晴らしいものを持ってくる印象が強い水樹奈々だが、これも例に漏れない。というか年々パワーアップしている。ヤバイ。

 加藤裕介藍井エイル麻生夏子大橋彩香、さらにはジャニーズ事務所関連に数多くの楽曲提供をしている作編曲家であるが、

 今回は水樹奈々の持つ色やその勢いに完全に寄せてきた楽曲を仕上げてきた。

 イントロからガツンと入るストリングスといい、印象的なキーボードのフレーズからガチガチに歌謡曲とアニソンの基本スタイルを踏襲する曲展開…。

 

 ヘヴィメタル的な様式美を感じる。というか水樹奈々はメタルなのでは…?水樹奈々の様式美はメタルと同じだった…?つまりヘヴィメタルウォーリアー?(錯乱)

 

 まあ、実際ジャンルとしてはシンフォニック・メタルとかメロスピみたいな要素あるし。

同世代の声優アーティストと比較すると

坂本真綾が「アニソンに聞こえない声優ソングの先駆け」なら、

水樹奈々は「林原めぐみ的な近代のアニソン様式の継承者でありスタジアム・ロック声優の先駆け」とも言えるだろう。

 僕はどちらも大好きなのだが、同年齢でここまで立ち位置の違う2人も珍しいなと思う。

 どっちもOasis(イギリスが産んだ国民的ロックバンド)好きって聞いてるし、ある程度共通点はあるはずなんだが…(おそらく2人が好きなOasisの時期は違う。そんな気がする)。

 話を本題に戻すと、そのいい意味でアニメソング感を感じさせるド級のポップさと力強さに負けないくらいに強烈な存在感のある水樹奈々のボーカルに驚かされる。

 もともと演歌歌手を目指していただけあり、その発声は完璧に尽きるし、声の伸びも素晴らしい。年齢とともに年々深みを帯びるその感情表現も含め、凄まじい領域に達しようとしてる。

特にラスサビの

”願うは

数多の夜抱き締め 生まれ来る陽のように

君の側に寄り添い 全て照らしたい

嘆く激しい雨打たれても 枯れることのない愛が

僕らを導くから あの日の約束だけは忘れないでいて 必ず君を迎えに行くよ”

の「願うは」の声の伸びが凄まじい、何回聴いてもこの部分鳥肌が立つ。

女性ソロアーティストとして浜田麻里路線目指せるぞコレ…。てか本当に身体に気をつけて目指してほしい…。

 この曲があることでとりあえずこのシングルは超絶な名作なんですよ。

とりあえず聴いてみような!


水樹奈々『NEVER SURRENDER』MUSIC CLIP(Short Ver.)

 

2.GET BACK 作詞:矢吹俊郎 作曲:HAMA-kgn 編曲:EFFY

GET BACK

GET BACK

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  こちらは劇場版アニメ「魔法少女リリカルなのは Detonation」挿入歌

 

 矢吹俊郎と言えば水樹奈々奥井雅美に縁深いアーティストであるが今作では作曲ではなく作詞で参加している。もともと「POWER GATE」からしばらくプロデュースしてたし、still in the grooveまでのシングルは作詞も作曲もしていた。

 その後も縁が切れることはなく、MASSIVE WONDERSや折に触れてガッツリ関わっているわけなのだが、やっぱり矢吹俊郎が関わるとなにか特別な気持ちになるのだ。坂本真綾菅野よう子の関係に少し似ている。

 作曲はFelion Soundsという音楽グループ、クリエイトチームに所属しているHAMA-kgn。この作品で初めて名前を知ったのだが、調べたらSHOW BY ROCK!!にも様々な形で関わっているようだ。まだまだ若手な感じがするので将来が楽しみである。

 そして編曲は水瀬いのりアイマスラブライブ!など様々な今をときめくアニメソングコンテンツに作曲や編曲で関わっているEFFY。他にもオーケストラとの共演とかもしてるっぽい。凄い活動的。

 水樹奈々の作品は他にもAngel Blossom」「NECESSARY」「GLORIA」で編曲としてガッツリ関わっている。

 そんな人達が関わって出来た曲は…

 

 意外と普通の水樹奈々印という感じになった。1曲目と雰囲気が似ているのは恐らく映画に合わせて来たっていうのもあるのだろうが、水樹奈々の持ち味を活かすような楽曲提供をするとこのような物になるんだろうなと思う。編曲の方がキーボーディストなだけあり、各種パートのアレンジはかなりよく出来ている。

 ストリングスにキーボードが大胆に施されたビートロック的な雰囲気も漂う縦ノリのヘヴィメタル的歌謡曲。これこそが彼女の持ち味だ。

 まあ一本調子という意見もわからないではないのだが、逆にここまではっきりと方向性を定めてると潔いし、恐らくこのような真っ直ぐな方向性のアニメソング的ロック曲で水樹奈々を超えるのは至難の業だろう。そのような自信も伺えて、個人的には好みである。

 坂本真綾のように独特な譜割りではなくひたすらにストレート。彼女の声の伸びを最大限に活かせるアレンジ。やっぱり個性を持った人間にはソレに見合ったサポートが有るのだなあと改めて感じることが出来る楽曲である。

”月夜に願います 今度は僕の番

もう負けやしない 迎えに行く

何が起きても ブレたりはしない

魂を この腕に 込めたなら 振り上げよう ”

 ストレートなロックサウンドとストリングスにこの歌詞が水樹奈々の伸びやかな歌唱で乗り、キメが入ってギターソロ…

 厨二臭くてベタだけど、超かっこいいよな!!!

 

3.サーチライト 作詞:水樹奈々、藤森真一(藍坊主) 作曲:藤森真一(藍坊主) 編曲:藤間仁(Elements Garden)

サーチライト

サーチライト

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 エデンとかいう超絶に藍坊主…というか往年のLUNA SEA…に影響されたヴィジュアル系バンドみたいな楽曲をブチ上げて来た藍坊主のベース、藤森真一まあ藍坊主はドラムの渡辺拓郎がガチガチのSLAVEだしな。

 まあとりあえず藍坊主と水樹奈々のエデンとLUNA SEAの影響下にある往年のヴィジュアル系バンドの例になる動画を貼っておきますね。


藍坊主「生命のシンバル」MV


水樹奈々『エデン』MUSIC CLIP(Short Ver.)


the GazettE 『SHIVER』Music Video

 

改めて聞くとどれも超かっこいいな!!!

 

 じゃあ、そんなところのバンドマンが水樹奈々がまた手を組んで作った曲ってやっぱり、そういう感じに…ならなかった。

 これが思った以上に普通に水樹奈々してる…というか雰囲気的にはエデンじゃなく最新アルバム「NEOGENE CREATION」(2016)「君よ叫べ」に近い、水樹奈々が持ち味の一つとしてるどストレートなポップ・ロック路線

 サーチライト…

 エレガが作曲じゃないからストリングスがドバー!のハイテンポな脳筋ラーメン二郎曲になってない!アレはアレで大好きなのだが…。

 

 もともと映画「ふたつの昨日と僕の未来」のために制作された楽曲なのだが、調べてみると主演は仮面ライダー鎧武で主人公役を務めた「佐野岳だし、何やら新居浜市市制80周年」の一環で制作された映画らしい。なんか凄い。

 

というか水樹奈々もビッグになったなあ…。

 

そんな感慨に浸りつつも、楽曲は本当にストレートなポップ・ロック。応援歌的な意味合いもあるのか、サビの1番盛り上がるところで挟まれるクラップがとてもいい。

 素直に聴いていて元気をもらえる。やっぱり水樹奈々の曲は背中を押してくれたり、引っ張り上げてくれたりしてくれるのだ。坂本真綾のポジティブソングとはまた違う良さがある。

 サビとかメロディラインがどことなく懐かしさを感じるのは、全体的にメロディが歌謡曲っぽいからか。そう考えると9mm Parabellum Bulletっぽい感じの曲でも彼女と相性が良い気がしてきた。

 

”サーチライト サーチライト 弛まぬ道筋よ

不変の先の真実へ連れてっておくれよ

何もない 何もない 闇の中で知った

この痛みは絶対 無駄じゃないこと”

 

聴いてるとタイトル的に筋肉少女帯「サーチライト」も思い出すのだが…

 歌詞はまるで被らないけど。むしろ聴いてて苦しくなってくるけど…。 

  

4.嘆きの華 作詞:岩里祐穂 作編曲:吉木絵里子、華原大輔 弦編曲:前嶋康明

嘆きの華

嘆きの華

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 シングルのラストナンバーはTVアニメ「軒轅剣 蒼き曜(けんえんけん あおきかがやき)」のオープニング曲。

 このアニメのことを知らなかったのだが、調べてみると日本のテレビ東京と台湾の企業の共同制作らしい。アニメにも国際化の波が押し寄せていることを改めてここで実感するとは…。

 今作で作詞を担当している岩里祐穂だが、坂本真綾を聴いてる自分としては菅野よう子とのタッグで幾度となく見ている名前である。他には中山美穂今井美樹、近年ではももクロへの作詞提供など数々のビッグアーティストと仕事をしている。

 ちなみに、水樹奈々に対して初めて歌詞を提供したのは「NEOGENE CREATION」の「はつ恋」なのでまだまだ付き合いは3年にも満たない。

 しかし、そこはやはり歴戦のプロ。

 

”陰(かげ)と陽(ひ)が交わる夕暮れ遥か

燃えるように西空が血潮に染まる

惑える紅の泪でしょうか

すれ違う想いが哭(な)いているのですか”

 

 ガッチリ水樹奈々の色が出る歌詞、世界観に合わせてくるのは流石というほかない。個人的には森雪之丞水樹奈々さんが仕事をしてくれたりしてくれると更に面白いなと思います。歌わせても凄いカッコいいしな…。

 作曲に関しては吉木絵里子が安定でPHANTOM MINDS」(2010)で関わって以降、純潔パラドックス」(2011)BRIGHT STREAM」(2012)など、様々な水樹奈々の楽曲に彩りと新たな風を吹き込んだ立役者、という認識をしている。そして「はつ恋」の作曲も担当している。

 そしてもうひとりの作曲者が華原大輔だが水樹奈々では「はつ恋」の作編曲で知られる他、EXILE乃木坂46への楽曲提供でも知られている。

 こういうJPOPに強い方がいると楽曲が一気にポピュラリティを帯びるので強い…。

 編曲では吉木絵里子や華原大輔と共に弦編曲として前嶋康明がいるのだが、キーボード奏者でもあり森高千里柴咲コウのツアーサポートやバンマス、劇団四季の楽曲のピアノコンダクターをやってたり…簡単に言えば超すごい人である。

 

 まあ、実は作詞作曲編曲が全部「はつ恋」と全く同じ布陣なんだけどね。

 

 そんな彼女ら彼らが作った曲どこか「はつ恋」にも通じる和の香りもするし、少しアルビレオのようなエスニック、オリエンタル風味もする。恐らくアニメの世界観にも悉皆合わせてきているのだろう。

 やはり水樹奈々の声質や歌い方を熟知してる作曲陣が集まっているのか、歌謡曲調のメロディに伸びやかな声が通るように、言葉を詰めすぎない歌詞が非常に心地よい。

 シングルのシメとしてもふさわしいと思うし、何回聴いてもカッコいい。

 あんまり好き好き言ってる人見たこと無いけど…。

 

最後に

 めっちゃ書いてしまった…。

 今回のシングルは割とどれも似たような方向性の曲調を集めた印象だが、水樹奈々の声の力強さや説得力が退屈さを与えない。

 

 もちろん、作詞作曲も凄いのだがやはり素材なのでそれを使いこなせる水樹奈々の技量と歌唱力が素晴らしい。

 

 そういったことが確認できることもあり、やはりこのシングルを僕は推したいのだ。

 

 CDだけでも凄いのだがライブだとCD音源を超えてくるパフォーマンスをバンバンかましてくるあたりバケモノというほかないし、バックバンドやレコーディングメンバーがプロフェッショナルを集めてきてるあたり本気度が違う。

コレいつ見てもほんと凄い。


水樹奈々『ETERNAL BLAZE』(NANA MIZUKI LIVE CIRCUS 2013 in 西武ドーム)

 

 あとこれは個人的な感想なのだが…

 

 気合とか根性とかそういう感じの水樹奈々のライブや普段の感じを見てると、X JAPANと重なる。

エクスタシーレコードにこういうタイプの人いそうだもん。X一緒に歌ってそう。

 

 坂本真綾BUCK-TICKみたいに飄々としてるのとは対照的だ。

 ちなみに、水樹奈々のブログで坂本真綾に関する書き込みがたま~にある。

Oasisオタクの2人としてなんかプライベートで関わりとかないかなって密かに期待してるぞ…。好きな時期違いすぎて喧嘩になりそうな気もするけど…(ただの偏見です)。

 

 ここまで読んでくれた方は本当にありがたいです!他のも読んでくれたらもっと嬉しいです。じゃあね!

冬をささやかに彩る~坂本真綾「Driving in the silence」(2011)

はじめに

  坂本真綾第2弾、ということで…。

 実はこっちの記事のほうが先に着手したのに「逆光」のほうが早く終わってしまって困惑してる。詳しくはこちら。

 

disheatchaos.hatenadiary.com

 

 

 そもそも坂本真綾を好きになったのは小学校5年生でそこからずっと聴き続けてる。そう、ヴィジュアル系を好きになるより早いのだ。と言っても1,2年程度の違いでしか無いけども。

 色々坂本真綾の音源を聴き続けてる僕が、冬に紹介する音源と言ったらコレしか無いので、読みましょう。冬のコンセプトアルバムの名盤だぞ!!!

 坂本真綾を好きになりましょう。

 

坂本真綾「Driving in the silence」(2011)

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  1. Driving in the silence
  2. Sayonara Santa
  3. Melt the snow in me
  4. homemade christmas
  5. 今年いちばん
  6. たとえばリンゴが手に落ちるように
  7. 極夜
  8. 誓い
  9. Driving in the silence -reprise-

  ※プロデュース、全編曲:河野伸

 

 

Driving in the silence(初回限定盤)(DVD付)

Driving in the silence(初回限定盤)(DVD付)

 

 

 坂本真綾が初のオリコン1位を獲得した7枚目のオリジナルアルバム「You can't catch me」(2010)を経て新たに出したトータルで33分、3枚目のコンセプトミニアルバム。

 テーマが「冬」「冬景色を見つめる坂本真綾の視点」なのだが、そのテーマに沿って様々な角度から描かれている様は題材とは対照的にどこか彩りの豊かさを感じられる。

 僕は坂本真綾のアルバムの中でもトップクラスにコレが好きなのだが、1曲ずつ中身を見ていこう。

 

1.Driving in the silence 作詞:坂本真綾 作曲:柴草玲

Driving in the silence

Driving in the silence

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 作詞が坂本真綾なのは、もう定番だとして作曲の柴草玲(しばくされい)が見慣れない方もいるだろう。

 実はこの方、Coccoの超名曲「強く儚い者たち」「樹海の糸」の楽曲提供者であり、また90年代前半から女性だけのサルサバンドチカブーンのキーボーディストとして活動している。ちなみにチカブーン日本ゴールドディスク大賞のニューアーティスト賞を受賞したほか、キューバとの音楽交流の先駆けとなっている。

 


1993ChicaBoom "春夏秋冬・朝昼夜"PV

 じゃあ、サルサっぽいの?Coccoみたいな感じなの?って言われると全然そんなことはなく、2分半弱というワンコーラス程度の短めの尺の中に、ピアノ・アコースティックギター・パーカッションの織りなす美しい旋律が光る。

 そしてそこに坂本真綾の美しい歌声と幾重にも折り重なる美しいコーラスが重なることで、物足りなさを感じるながらも始まりを感じさせる極上のポップスに仕上がっている。

”きみを好きになることは 自分を好きになること

自分を好きになることは 世界を好きになること”

 そう優しく語りかけていながらも、

”静寂を滑る ハンドルを握る

永遠に続く孤独を握ってる ”

 冬の寂しさと孤独を感じさせることも同時に歌う。


「Driving in the silece」 Music Clip

 

 誰かを引っ張り上げたり背中を押すのではなく、共に歩んでくれそうな歌を歌えるのが坂本真綾の大きな魅力だと思う。

 冬にしか聴かないと決めているが、冬になるといつも決まって聴きたくなる。そう思わせてくれるオープニングナンバー。

ちなみにコレを聴くと涙が出ます。

 

2.Sayonara Santa 作詞:坂本真綾 作曲:Rasmus Faber・Frida Sundemo

Sayonara Santa

Sayonara Santa

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 今では坂本真綾の楽曲提供として常連となったRasmus Faberだが、初めて共にお仕事をしたのはこのアルバムから。今作はFrida Sundemoとの連名である。

 Rasmus Faber(ラスマス・フェイバー)スウェーデンの音楽プロデューサーでジャンルは主にハウスミュージック。また、作編曲家でもありDJやキーボーディストとしても活躍するかなり多彩な御方。アニソン界だとプラチナ・ジャズで有名だろうか…?

 そして、Frida Sundemo、フリーダといったほうが伝わりやすいのかもしれないがも同じくスウェーデンのシンガーソングライターであり、主にダンスミュージックやエレクトロを主軸の活躍する女性ボーカリストだ。ちなみにデビューがラスマス・フェイバーのプロデュースなのでこの2人の縁は深い。

 ちなみに2人でやってる音楽はこんな感じです。僕は凄い好き。


Indian Summer - Rasmus Faber feat. Frida Sundemo

 超きらびやかなポップミュージックでいつ聴いても心が踊りだしてしまう。

 

 さて、話を本題に戻すと今作では坂本真綾「クリスマスにサンタを待ちわびていた子供の頃」「大人になってしまった自分」を対比するかのような歌詞が特徴的で、

それがストリングスやおもちゃ箱のようにきらびやかに彩られたサウンドに乗っかるんだからもうたまらないでしょ。

 しかも、このサンタという箇所は色々な解釈と含みを持たせることが出来るように作られているのが個人的にとても好き。

”窓から見送ったら もう会えなくなるわ

さよなら あなたが好きだった

出会った頃まだ少女だった

あれから

たくさんの冬が過ぎて もう大人になった”

 PVだとここの最初の部分で坂本真綾が窓を見ながら歌うんだけど…

めちゃめちゃ好き(語彙力)!!


坂本真綾 / Sayonara Santa 【PV】

 全然関係ないけど、途中で出てくるすっぽり身体が収まる岩…

LUNA SEAのMOTHERのPVっぽいですよね。

 

3.Melt the snow in me 作詞、作曲:Rasmus Faber・Frida Sundemo

Melt the snow in me

Melt the snow in me

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 アルバムの中でガラッと雰囲気が変わる曲であり、全体的に孤独とタイトル通りの雪解けを感じさせるミディアムテンポのナンバー。

 全編英語の歌詞で構成されており、日本語にはない言葉の響きや流れを堪能することが出来る。

 打ち込みで計算され尽くした静謐な音色に重なるキーボードやストリングスもさることながら、坂本真綾の歌声がまた絶妙であり、更にサビの部分でコーラスと一体になることでマジで天上の美しさになる。

やっぱり坂本真綾は神。

 そして後半からウィスパーボイスのコーラスがかぶさる構成がマジで素晴らしい。個人的にはアルバムの中で1、2を争う曲。

 どことなく菅野よう子女史に通じるような幻想的な雰囲気を感じる。

 

”You arrived, you saved me from the fading stars

And the light you gave me filled my empty heart

Then you gently wept my frozen tears away

Saviour is your name today”

 サビの部分の歌詞なんですけど、和訳すると凄い綺麗な言葉になるので英語ができる人はどうぞ。

 

4.homemade christmas 作詞:坂本真綾 作曲:江口亮

homemade christmas

homemade christmas

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 「Buddy」での作曲や近年だとla la larksとしても坂本真綾の関わりが深い江口亮から提供された楽曲。

 前曲が孤独と雪解けだとすると、この曲はうって変わって団欒をテーマにした曲。

 若干懐かしさの漂う音色にアコースティックギターの音色とカッティングが冴え渡るナンバーで、曲だけでも暖炉のそばで歌っているかのような印象を受ける。

 坂本真綾のありふれているようで幸福なひとときをそのまま切り取ったかのような歌詞も特徴的である。

 クリスマスに友達と集まってプレゼントを持ち寄り、ささやかなお祝いをする。

 聴いていると電気を暗めにして暖炉を皆で囲んで、飲み物でも持ちながら歌っている様子がありありと浮かんできて…サビで思わず口が緩んでしまう。

 

”赤い扉が目印 ベルが鳴るのを待ってる

プレゼントには 大きなリボン忘れないで

みんな ワインを選んで

今日のこの夜を待ってた

おしゃれしてね とびきり

7時ちょうどに乾杯しよう

今年のクリスマス 一緒に過ごそう

暖炉に集まって 手をたたき歌おう”

こういうありふれた日常を切り取れる歌っていいよね…。

 まあ、こういう日常って意外と手に入らないものなんですけどね。かけがえのないものなので大事にしたいですね。

 

 5.今年いちばん 作詞:坂本真綾 作曲:永野亮

今年いちばん

今年いちばん

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 結論から言うと…

 

僕はコレが1番好きです。マジでこれだけ突出して聴いてる。

 

 実は永野亮さんはこのアルバムで知ったのですが、ロックバンドAPOGEE(アポジー)のボーカリスト

インディーロック感とシティポップ感、さらにニューウェーブ風味とブラック・ミュージック的なリズム感覚が絶妙に混ざっている、ノれる良いロックバンドです。聴きましょう。


APOGEE - Sleepless (Official Music Video)

 

 で、そんなハイブリッドな音楽性のバンドのボーカリストが提供した曲がどんな物かと言うと…

 ウッドベースの良さやジャジーなリズムの良さを全面に押し出した名バラードになりました。

 そこに坂本真綾の詩的でロマンチックさのある歌詞が乗ると…

 

好き…

好き…!

好き!!!

 

って感じになりますよね。

 

”歩こう 長い夜の ほんの短い夢

あつい缶コーヒー買って 君がかまわないなら”

 

 この時点ですでにロマンチックじゃありません?

しんしんと降り積もる夜中の雪道をふたりっきりで歩いてるようなさ~!!

なるじゃん!!そんな景色が浮かぶじゃん!!

あ、ちなみに自己投影は一切しませんのであしからず。僕は第三者視点で良いんです。

 

それでさ…

 

”表通りは明るすぎる

ひとりぼっちよりも ふたりって 寂しいよね”

 

 ここでなんか冬ならではの静けさと精神的な孤独と感じさせたり、ここの道は街灯だけ照らされて延々と続く裏道なんだろうなとか、色々浮かぶでしょ…。

 それで…

 

”遅すぎたの 早すぎたの

なぜ今ごろ君は現れたの

闇にまぎれ 街灯の灯をよけて 夢覚めるまで”

 

 このサビはずるい!…ずるくない?

 

 坂本真綾の歌声でコレは卑怯!悪魔の所業!

 

簡単にまとめると…

 

好き!お前ら全員この曲は聴け!!

 

6.たとえばリンゴが手に落ちるように 作詞:坂本真綾 作曲:永野亮

たとえばリンゴが手に落ちるように

たとえばリンゴが手に落ちるように

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 こちらも作曲は永野亮。

 ガットギター含め楽器隊がデッドな音色が特徴で、独特のアクセントとフレーズのある楽曲が印象的である。

 坂本真綾の歌詞も疑問形がやたら多くてなんか自分に問いかけられている気持ちにもなってしまう。声質が若干昔の頃っぽくてそこがまたいい感じになって入ると思う。

 

”たとえば 冬のつぎ 春がくるように

リンゴが手に落ちるように

映画の結末が不満なように

地球が丸いように ”

 

最初の歌詞の例え方自体がかなり独特なんだよな。ここで引き込まれる。

そして…

 

”わかりきってるんだ そんなことは

僕らの恋は始まってるんだ

絡み合ってるいろんな事情なんかはいいとして

君はどう思う? 君はどうしたい?”

 

 こんな感じでサビの全てが疑問系なのである。

 恋の始まりを「君」という二人称を効果的に用いることでより鮮やかに彩っているこの曲は、冬というより冬の終わりから春の初めを感じさせるナンバーだと思う。

  ポップスとしてかなり独特な感じがするのですがサラッと聴けるのは、やっぱり坂本真綾に依るところが大きいなあと感じますよ…。

 

7.極夜 作詞:坂本真綾 作曲:Rasmus Faber・Frida Sundemo

極夜

極夜

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 こちらもRasmus Faber・Frida Sundemoの連名作曲。

最初に聴いたときは「独特だな…」って思いました。

 ストリングスの美しさやコーラスの美しさは確かにあるのだが、譜割りが独特なのかその区切りがかなり不思議で今までに聴いたことのないポップスに仕上がっている。

 さらに、ドラムのフレーズや音色のなんとも不思議な感じはどことなくDIR EN GREYのShinyaを感じさせる。

これがそのドラム。ちなみにこれはDIR EN GREYの最新アルバムからの超名曲。


DIR EN GREY - 「Ranunculus」(Promotion Edit Ver.) (CLIP)

 

 まあこんな感じのかなり変わったポップソングなのだが、そこに坂本真綾のコーラスが美しく乗ることで生み出される雰囲気は鳥肌が立つほどに素晴らしい。

 「私は丘の上から花瓶を投げる」「KINGFISHER GIRL The Song of "Wish You Were Here"」「Vento」を彷彿とさせるスルメな歌が聴くたびに新たな魅力が発見できる。

 極夜」は日中でも薄明かりや太陽が沈んだ状態ー主に北極圏や南極圏で起きる気象現象ーを指す言葉だが、

恐らく坂本真綾一時期旅に出て色々な国を見て回ったことや、北極圏のあるアイルランドでロケを重ねたことは決して無関係ではないはずだ。

 

”朝目覚めるとすぐ あなたのこと思い出して

もう一度目を閉じる あといくつ眠れば 悲しいこと

氷のように溶け出して 涙になるのだろう”

 

コレがまさに冬の孤独と夜の深さを思わせている。恐らく昔では書けない歌詞であろう。

 

"のぼらない太陽 凍った星

時が止まることはない それでも

あなたがいないのに 私はいる

祈りは誰に捧げて 誰を救うためにあるの"

 そしてここは完全に極夜というタイトルとリンクしている。

直接的に一切言わないで表現しきれるのが素晴らしい。

 

”音をたて 震えながら

狂おしいほどに

生きている 生きているわ

生きている 今 今”

ここの部分は昔なら書けないだろう。本当に素晴らしい。

 

 しかし、この曲のクライマックスはここではないのだ…極夜とその次の曲を持ってクライマックスを迎えるのだ…。

 

8.誓い 作詞、作曲:坂本真綾

誓い

誓い

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 はい来ました!このアルバム最強のナンバー。

全世界5千兆人の人間が聴いてひれ伏せるであろう神曲

 

 まあ、実際本当に素晴らしい曲なのですが…。

 坂本真綾の作詞作曲ナンバーというといくつかあるのだが、この曲は彼女の作詞作曲したナンバーの中でも屈指の出来だと思う。

 そもそも「everywhere」を聴いた時点で坂本真綾凄いな…って改めて恐れ入ったのですが、それを超えてきた。

 この曲は震災後の空白期間の間に作られた曲らしいのですが、曲調にも歌詞にも乗り越える強さが滲んでいる。

 

”もっと強くなりたい もっと優しい人に

君が そうだったように もっと、もっと”

 

 この歌詞から感じられるのは男のようなある種の「堅い強さ」ではなく、女性ならではの「包容力のある受け入れる強さ」「飲み込んで前に進んでいく強い意志」を感じる事ができる。

 こう言った曲を作り上げられたのはやっぱり坂本真綾の今まで経てきた経験もあるだろうが、彼女の持つ世界への見方や感性がこういった曲を作り上げる力を育んできたのだなあと考えると敬服する他ない。

 

”何を失っても 僕は生きていくだろう

どんな悲しみも 踏み越えるだろう

愛を誓うとき 告別も 約束した ”

 

 この部分から大切な人との死別と愛を与える人間の強さを感じさせる中…

 

”そして冬が終わる 憂いを振りほどいて

君が好きだった季節が すべてをさらい 過ぎて行く

僕はこのまま このまま”

 

 死別を忘れることなく、そこに寂しさも感じつつ生きていくという一人の人間としての決意を感じさせる。まさしく「誓い」というタイトルに相応しい。

 オーソドックスな曲調とメロディの美しさが余計に坂本真綾の書いた歌詞と歌声を引き立てる。

 アルバムの実質的なシメとして極夜~誓いの流れは完璧だと思う。

 

この曲を聴いてるとコレがエモいか…ってなります。このアルバムは名盤です!

 

9.Driving in the silence -reprise- 作詞:坂本真綾 作曲:柴草玲

Driving in the silence-reprise-

Driving in the silence-reprise-

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 reprise、反復を意味する音楽用語。

そうやって静かに冬は終わり、また繰り返す…

 

最後に

 アルバムを聴きながら書きました。

 自分の過去と現在、様々な思い出が詰まったこの作品ですが、改めて聴くと坂本真綾さんの持つ感性の鋭さや視点の多様性に驚くばかりです。

 彼女を好きになり、その生き方や感性を信じてきて良かったなあと心から思いました。

 特に、浪人中にたった1回だけ行ったライブが坂本真綾さんのもので銀河劇場の音響も相まってその素晴らしさにいたく感動した覚えがあります。

 3枚のコンセプトアルバムを再現した名演です。


Blu-ray&DVD「MAAYA SAKAMOTO LIVE 2011 in the silence」ダイジェスト

 

 真綾さんの綴る言葉の数々や極上の作曲提供、更に彼女自身の表現力など様々な物が1つになったときに生まれる作品は、他と比肩なきものですし、やっぱり1人のアーティストとして素晴らしい方です。

 

 冬が終わればいつものようにまた次の冬が来るまでこのアルバムはしばしお休みさせて待とうと思います。

 

この記事を通して1人でも多くの方に坂本真綾の魅力が伝わったなら幸いです。